Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-11] 物や人と適切な距離をとって歩行できない右片麻痺患者への介入

*菅原 紘子1 (1. 函館稜北病院)

【はじめに】
 今回,麻痺側の物や人と適切な距離をとることができず,安全に歩行できない症例を経験した.両下肢に注意を向ける課題を行ったため,経過を報告する.

【症例】
 左MCA領域に脳梗塞を発症した80代女性.発症から1ヶ月で当院へ転院となった.高次脳機能障害は,注意機能障害,失語症(非定型),失行症(観念失行中心)があった.麻痺は軽度で感覚障害はなく,独歩で歩行可能だった.しかし,右側を中心に物や人にぶつかる,またはぶつかりそうになる為,声がけや介助が必要だった.また階段昇降では降段時に右下肢のひっかかりがみられた.TUGは12.84秒で,歩行路の誘導が常に必要で,視線は常に下方だった.訓練に集中して取り組むことが可能で,学習した内容を動作へ反映することができ,慣れた環境であれば気づき修正することが可能だった.

【病態解釈】
 周囲を確認しながら歩行するといったような複数の注意が必要な場面では,右側を中心とした注意の見落としが観察された.分配性の注意障害と右側を中心とした方向性注意の問題が考えられ,身体を介して左右の情報を統合することで歩行時の安全性の向上が図れないかと考えた.

【訓練・結果】
 絨毯を足底へ挿入し向きを問う課題を2週間実施した.1枚の絨毯を両足底へ挿入した課題では,エラーが多く,両側の情報を統合する為に,片側にのみ絨毯を挿入する課題へ変更した.正答数や解答速度も向上した為,再度両足底へ絨毯を挿入する課題を実施した.解答可能となり,絨毯を探索する動作も観察された.自信をもって解答できる場面が増え,以前よりも左右を繋げて考えることができるようになったというような発言がきかれた.右側の物にぶつかる場面はなくなり,以前よりも人や物と距離を保てるようになった.階段降段時の右下肢のひっかかりも軽減し,1ヵ月後のTUGは9.47秒で歩行可能となった.歩行路の誘導は必要なくなり,視線はやや遠位にむけることが可能となった.至適速度ではコーンに右下肢をぶつけることなく歩行可能だが,速歩でぶつけてしまう場面は残存した.

【考察】
 両下肢の情報を統合する課題を行ったことで,左右へ適切に注意を分配することが可能となり,周囲の物や人と適切な距離を取りながら歩行することが一部可能になったと考える.

【倫理的配慮】
 本発表に対し,症例に対して説明し同意を得ている.