Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-12] 体性感覚による頭頚部の姿位の識別が困難だった首下がりを呈するパーキンソン病の一症例
―静止画を用いて視覚情報と体性感覚情報を統合する介入―

*髙橋 奈都美1、青木 良磨1、三上 恭平1、加茂 力2 (1. 医療法人社団神天会 登戸内科・脳神経クリニック リハビリテーション科、2. 医療法人社団神天会 登戸内科・脳神経クリニック 脳神経内科)

【はじめに】
 頚部伸展の識別が困難な首下がりを呈するパーキンソン病(PD)患者に対し,静止画を用いた視覚と体性感覚の統合課題により首下がりが軽減した.以下に報告する.

【症例紹介】
 70歳代男性,罹病歴9年のPD患者.Hoehn&Yahr 重症度分類はⅣ,Lドパ換算用量は500mg/日,統一PD評価尺度はPartⅢ31点であった.Mini-Mental State Examinationは24点で認知機能は保たれていた.徒手筋力検査は頭部・頚部伸展ともに3,垂直位を超えて頭頚部伸展が可能だが,頭頚部屈曲で顎が胸骨に着くような首下がりがみられ,「頭が重くて上がらない」と訴えた.頭頚部の自己修正では頚部伸展を頭部伸展で代償しており,座位での頭頚部を自己修正した姿位(頭頚部角度)は頭部48度屈曲位,頚部58度屈曲位であった.他者の模倣による姿位の観察課題で,自身の姿勢に頚部伸展が不足していることを認識できるが,他動運動での頭部伸展と頚部伸展は識別できなかった.

【病態解釈】
 症例は体性感覚で頭部伸展と頚部伸展を識別できず,代償的な姿勢修正であるため頭部の重さを訴えていると推察した.視覚と統合しながら,頭頚部の識別ができれば,首下がり姿勢の修正が可能と考えられた.

【介入と経過】
 4枚の静止画(a.頭頚部垂直 b.頚部屈曲+頭部伸展 c.頚部屈曲+頭部屈曲 d.頚部垂直+頭部屈曲)で,①誘導された姿位を静止画から選択する課題(視覚と体性感覚の統合),②誘導された姿位から頭頚部垂直へ修正する課題(認識された姿位に基づく運動出力)を行った.①の課題では,体幹を基準とすることにより体性感覚で頭頚部位置の識別が可能となり,頚部伸展の不足が自覚可能となった.その後②の課題により,体性感覚に基づく自己修正が可能となり,頭頚部角度は頭部7度屈曲位,頚部5度屈曲位と首下がりの軽減が見られた.患者の認識も「今まで頭だけを動かしていた」と変化した.

【考察】
 頭頚部の位置の識別が困難だった本症例には,視覚と体性感覚の統合課題が有効だった.PDでは視覚を用いたリハビリテーションの有効性が分かっている.静止画を用いた視覚と体性感覚の統合課題は,自己の姿勢の認識が困難なPD患者の自覚を促す介入として有効な可能性がある.

【倫理的配慮,説明と同意】
 発表に関し本症例に口頭で説明し,同意を得た.