[P4-01] 右中大脳動脈の心原性脳塞栓症により左半側空間失認を呈した一症例
【はじめに】
空間失認はリハビリテーションアウトカムを不良とし,退院時に無視が改善していないと在宅復帰が困難であることが報告されている(辻本.2020).今回,左半側空間失認を認めたが,趣味であった「犬の散歩」という過去の経験を想起することにより左側への気づきが得られ,姿勢・車椅子駆動に改善がみられた症例を経験したため報告する.
【症例紹介】
症例は70歳台男性.右小脳・前頭葉に心原性脳塞栓症を発症し,急性期病院で医学的処置を受け,発症から46日後に当院回復期病棟へ転棟した.初期評価時,MMSEは25点.BRSは上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅴ,深部・表在感覚ともに左上下肢軽度鈍麻,線分二等分線は10mm-15mm右側への偏位を認めた.病棟では車いす自操が可能であったが,仙骨座りでの座位姿勢であり,左側の壁に接触する場面が多く観察された.観察的訓練における上肢のタブレット課題では左上肢の外側方向への運動方向の認識に困難さを認めた.介入中はやや多弁傾向であり話題が転導しやすく,ペットの犬に関する話しが多かった.
【病態解釈】
症例は脳塞栓症に伴う機能乖離の影響から左側体性感覚情報の収集及び統合の困難を呈したと解釈する.これにより左上肢の外側方向への運動及び空間のイメージが障害されていると推察した.
【治療アプローチおよび経過】
空間に注意を向ける訓練として座位でのタブレット課題を実施.通常の課題に加えてリードを使用して犬と散歩している場面を想起するようにした.結果,訓練開始から81日後ではタブレット課題の正答率上昇とともに,左側空間に対する記述を認めはじめた.机上課題では線分二等分線は0-5mm右偏位に改善した. 車椅子駆動では仙骨座りの改善を認め,左側の壁への接触が軽減したことから移動動作の介助量軽減を認めた.
【考察】
左上肢の空間課題と過去の経験である犬の散歩を想起することにより上肢の左側への運動に意味づけが成され,さらにはその先の犬の存在の想起から身体近傍空間の構築に至ったものと推察する.今回の経験を通して,認知課題に過去の経験の想起を促すことで,体性感覚の情報処理から左側空間に対する気づきに繋がり,運動空間の再構築に至ったと考察する.
【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表は対象症例に同意を得ており,情報の使用には個人が特定できないように配慮した.
空間失認はリハビリテーションアウトカムを不良とし,退院時に無視が改善していないと在宅復帰が困難であることが報告されている(辻本.2020).今回,左半側空間失認を認めたが,趣味であった「犬の散歩」という過去の経験を想起することにより左側への気づきが得られ,姿勢・車椅子駆動に改善がみられた症例を経験したため報告する.
【症例紹介】
症例は70歳台男性.右小脳・前頭葉に心原性脳塞栓症を発症し,急性期病院で医学的処置を受け,発症から46日後に当院回復期病棟へ転棟した.初期評価時,MMSEは25点.BRSは上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅴ,深部・表在感覚ともに左上下肢軽度鈍麻,線分二等分線は10mm-15mm右側への偏位を認めた.病棟では車いす自操が可能であったが,仙骨座りでの座位姿勢であり,左側の壁に接触する場面が多く観察された.観察的訓練における上肢のタブレット課題では左上肢の外側方向への運動方向の認識に困難さを認めた.介入中はやや多弁傾向であり話題が転導しやすく,ペットの犬に関する話しが多かった.
【病態解釈】
症例は脳塞栓症に伴う機能乖離の影響から左側体性感覚情報の収集及び統合の困難を呈したと解釈する.これにより左上肢の外側方向への運動及び空間のイメージが障害されていると推察した.
【治療アプローチおよび経過】
空間に注意を向ける訓練として座位でのタブレット課題を実施.通常の課題に加えてリードを使用して犬と散歩している場面を想起するようにした.結果,訓練開始から81日後ではタブレット課題の正答率上昇とともに,左側空間に対する記述を認めはじめた.机上課題では線分二等分線は0-5mm右偏位に改善した. 車椅子駆動では仙骨座りの改善を認め,左側の壁への接触が軽減したことから移動動作の介助量軽減を認めた.
【考察】
左上肢の空間課題と過去の経験である犬の散歩を想起することにより上肢の左側への運動に意味づけが成され,さらにはその先の犬の存在の想起から身体近傍空間の構築に至ったものと推察する.今回の経験を通して,認知課題に過去の経験の想起を促すことで,体性感覚の情報処理から左側空間に対する気づきに繋がり,運動空間の再構築に至ったと考察する.
【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表は対象症例に同意を得ており,情報の使用には個人が特定できないように配慮した.