Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P4] 高次脳機能障害

[P4-03] 精神症状を基盤に持つと思われた 左半球損傷患者に対するコミュニケーション確立に向けた取り組み

*宮城 大介1 (1. 青磁野リハビリテーション病院)

【症例】
 80代男性。左側頭葉皮質出血発症し急性期よりリハビリ目的にて当院回復期へ転入後約4か月リハ実施。日常生活においてFIM18点。胃瘻増設した後、当院療養病棟へ転棟となり本発表者にてリハ継続対応となる。転入時、意識清明だが視線の一致なく発話も聞かれず能動的な交流は全くなく、麻痺症状は認めなかったが、身体内外を摩るような動作を繰り返すのみで意味性のある行為は認めなかった。

【既往歴】
 2年前に左側頭後頭葉皮質下出血にて当院入院歴あり、失語症(SLTAの聴理解で4語文以上8割、表出にて低頻度語の呼称9割、音読にて短文8割の正答可能)、右同名半盲が残存していた。また、「米兵に射殺される」「地下に秘密結社がある」などの妄想症状を認めていた。

【病態解釈・経過】
 転入時、視線の不一致は失語症状に伴う非言語交流の障害と考え、視線共有を目標に関わりを開始した。しかし、経過にてセラピストの視線を意図的に逸らす場面を認めた。前入院時に妄想発言を認めていたことから精神疾患様の意思疎通障害を呈している可能性を考えた。そこで、先行研究における精神疾患患者の対人交流での位置関係や視線の不一致についての報告を踏まえ、視線共有が少ない並行位置にて評価実施。結果、道具のやり取りが可能となる場面を認めた。このことから、今回発症に伴う全般的な認知機能低下に加え既往の失語症と妄想障害を基盤とした意思疎通障害ではないかと考え、視線共有を強要しない位置関係での取り組みを開始した。約2か月の経過にて視線を一致させ手を振り会釈するなどの行為を認め、失行様症状はあるが整容活動が可能となり、自発的に飲み物を口にする場面も認めた。この変化をかかわり指標(成人用)実践版を用いて職員10名と家族へ調査実施。結果、転入時平均5.3点から8.3点と改善を認め、協調項目でほぼスタッフ全員が改善項目をあげ、家族からも全ての大項目で改善を認めた。

【考察】
 脳卒中における精神症状は約5%で認めるとの報告がある。本症例は妄想症状と失語により、対人交流が障害されていたと考える。今回この疎通の困難さに対し、視線を強要せず対応することが対人交流における緊張感を軽減させ、症例の心的負荷を和らげ、セラピストとの二人称的関係の場を作ることが出来たのではないかと考える。

【倫理的配慮】
 開示すべき利益相反はなく家族からの同意と当院倫理委員会の許可を得ている。