Riabilitazione Neurocognitiva 2023

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一般演題

ポスター発表

[P6] 運動器系

[P6-04] 体性感覚への対向を促通することで肩関節の可動域制限が改善できた右上腕骨大結節骨折の症例―連合と触発の規則性に基づいた分析―

*恒石 剛章1、田島 健太朗1 (1. 医療法人新松田会 愛宕病院 リハビリテーション部)

【はじめに】
 現象学では連合と触発の規則性の分析があり,意味の繋がり方は類似性や対照性といった連合と触発の規則によって決まるというものである(山口, 2012).今回,右上肢の挙上が困難となった症例に対し連合と触発の規則性に基づいて分析し,認知運動課題を行い改善がみられたため報告する.

【症例】
 症例は60歳代女性で右上腕骨大結節骨折の保存療法を行っていた.受傷後三角巾固定となり4週で振り子運動,6週で他動的関節可動域運動,8週で三角巾解除,週2回のリハビリ開始となった.右肩関節の可動域が他動で屈曲90°,外転70°,外旋40°,自動の屈曲は45°であった.右上肢挙上時には肘関節屈曲と肩甲胸郭関節での代償運動が抑制できず,右肩周囲と上腕二頭筋の辺りで疼痛の訴えがあり「動かし方を忘れる」「手が上がるように動かしてます」と発言されていた.

【病態解釈】
 触発の規則に触発的レリーフという記述がある(フッサール, 1997).関心や情緒,価値づけや衝動によって感覚的意味が競合し,自我の対向が促通されるものや下方へ抑圧されるものが変化するという規則である.本症例において右上肢挙上時に肘関節屈曲や肩甲胸郭関節の代償運動が抑制できないことから,視覚像としての手の位置の表象に強く触発され,体性感覚である肩と肘の関節覚と上肢の重量覚が抑圧されているものと考えた.

【治療アプローチおよび経過】
 受傷後4ヶ月から肩関節の他動運動で円軌道に手を合わせて動かす課題を実施した.閉眼にて手の位置変化の仕方とそれに伴う上肢の重量の変化を識別するように促した.すると肘,手関節の不随な運動が抑制されていき「腕(全体)を感じる必要があった」と発言にも変化がみられた.経過に応じて自動介助運動でも課題を実施した.右肩関節屈曲可動域は受傷後5ヶ月で他動120°,自動90°,最終の9ヶ月では自動他動ともに160°まで可能となった.

【考察】
 連合と触発の規則により,抑圧された感覚は消失するのではなく,再度正常な触発力をもつように回復する可能性がある.本症例では閉眼他動で行う認知運動課題により,抑圧された体性感覚を呼び覚まし,行為に必要な体性感覚の連合を促通することができたと考える.

【倫理的配慮(説明と同意)】
 対象者から動画撮影と発表に関して書面にて説明し同意を得た.また,個人情報保護の観点から匿名性に十分な配慮を行った.