第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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一般演題

ポスター発表

[P7] その他

[P7-02] 通所リハビリテーションから通いの場への移行が奏功した要介護高齢者の特徴~親和動機および健康統制感尺度を用いた事例考察~

*壹岐 伸弥1、金 起徹1、長倉 侑祐2、林田 一輝3、尾川 達也4、石垣 智也5、川口 琢也1 (1. 川口脳神経外科リハビリクリニック、2. たつえクリニック、3. 宝塚医療大学、4. 西大和リハビリテーション病院、5. 名古屋学院大学)

【はじめに】
 通所リハビリテーション(通所リハ)から通いの場への移行は,主体的な社会活動への参加や健康行動の取り組みという観点において,自律性の向上を促進する可能性がある.しかし,通いの場への適切な移行支援に関しては殆ど議論されていない.本報告の目的は,通所リハから通いの場(体操教室)へ移行した後に,身体活動量の向上を認めた事例考察から,通いの場への移行が奏功する者の特徴を検討することである.

【事例紹介】
 腰部脊柱管狭窄症に対して再手術を行った,80歳代前半の女性(要支援2)である.術後37日より当院の外来リハビリテーション(外来リハ)を開始した.外来リハ終了時(術後4ヶ月)の応用的日常生活活動(Frenchay Activities Index)21/45点,社会的接触の動機を測定する親和動機測定尺度は情緒的支持,ポジティブ,社会的比較,注目の全下位項目が高く,健康統制感(日本語版Health-Locus-of-Control)は内的(自分自身)および外的(他者)統制ともに高値を示した.移動能力は屋外T字杖使用自立も長距離歩行は困難であり,通院には公共交通機関,もしくは同居者(夫)による送迎支援を要した.主な評価項目は身体活動量計を用いた運動強度別の活動時間,腰痛の強さ(Numerical Rating Scale;NRS),痛みの心理評価(Pain Catastrophizing Scale;PCS,Tampa Scale for Kinesiophobia短縮版;TSK-11)とし,通所リハ終了時(術後8ヶ月)と体操教室開始12ヶ月後(術後19ヶ月)に実施した.

【経過】
 身体活動量は通所リハ終了時よりも体操教室開始12ヶ月後において,1日の軽強度活動割合が20%から24%へ増加した.腰痛は通所リハ終了時同様に軽度(NRS2)で維持され,痛みの心理評価はPCSが42点から31点,TSK-11は39点から21点へ改善した.

【考察】
 他者との関わりを好み,病気や健康の原因を自分自身と他者の双方に帰属する特徴がある本事例は,主体的で社会的な行動が要求される環境(通いの場)に適応しやすく,身体活動量や痛みの心理面の改善が伴った可能性が考えられた.

【倫理的配慮(説明と同意)】
 本報告に対して,対象者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し,十分な説明を行った後に書面にて同意を得た.