Riabilitazione Neurocognitiva 2023

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学会長講演

学会長講演

[PL] 学会長講演

Sat. Oct 7, 2023 9:40 AM - 10:10 AM 第1会場 (B2F 伊藤謝恩ホール)

9:40 AM - 10:10 AM

[PL-01] 行為のメタラーニングとは何か

*安田 真章1 (1. 東京大学医科学研究所附属病院)

「回復とは病的状態からの学習である」.これは認知神経リハビリテーションにおける重要な視座であり,我々は日々患者の学習過程に対して介入している.そのため,患者自身にも学習者としての視点を獲得できるように関わり,セラピストも患者が行為の学習をよりよく得られるよう日々研鑽し,介入している.しかし,セラピスト・患者共に行為の学習を目的とするが,どこまでの学習が目標となるのだろうか.外を歩けるようになること,両手を使って食事がとれるようになること,他者に自分の意図を伝えられるようになること.個々の患者によってもちろん生活環境は異なり,個々の価値観や生活する上での必要な行為の目標はある.これらの行為の獲得が出来ればリハビリテーションの終了となるのだろうか.日々の訓練で獲得した行為だけでなく,その学習過程を学習できるようになること,自律的に学習を継続していく存在となることも目標になりうるのではないかと思う.ペルフェッティが提唱した認知神経学的人間とは,このように自律的に学習を継続していく存在としての意味も有しているのではないだろうか.

 今回の学術集会でテーマとして掲げたメタラーニングという言葉は機械学習などの分野で用いられているものだが,その意味は「学習の仕方を学習する」であり,認知神経リハビリテーションが目指している自律性と類似した意味を有していると思われる.また,ベイトソンの学習理論においても「学習についての学習」は提唱されており,学習の階層性について言及されている.上位の学習レベルが進むことで下位の学習が促進されるが,この上位の学習は無自覚的,潜在的なものとして提唱されており,われわれが介入できる可能性があるかどうかは不明な点がありさらなる議論を検討してみたい.いずれにしてもこれらの視点は人間の行為の回復を検討する上で必要な視点であると考え,行為のメタラーニングという視点で人間の運動学習過程を再考するとともに,メタラーニングという視点の応用可能性を皆さんと議論していきたい.

 これまでリハビリテーション分野においてメタラーニングという視点の応用可能性については検討されてきたことはない.そのため,本学術集会でこれらの視点が果たしてリハビリテーション分野において応用可能性があるのかどうかを議論するためにも,いくつかのキーワードから議論を進めてみたい.行為の予測や推論,人間の運動学習理論,行為の空間(物理的な距離だけでなく意味や概念的なものも含む),経験と記憶,比較やシミュレーション,認知過程とその組織化などを挙げた.もちろんこれだけでは不足している内容もあるが,メタラーニングを検討する第1歩としてご承知願いたい.そして,この2日間で参加いただいた方々と有益な議論や交流を通じて,これからも皆でよりよいリハビリテーションを展開し発展していけるようになること願う.