50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

Presentation information

アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー10

Fri. Nov 27, 2020 1:15 PM - 1:45 PM 第3会場 (2F B-2)

座長:人見 健文(京都大学 大学院 医学研究科 臨床病態検査学/京都大学 大学院 医学研究科 臨床神経学)

[AL10-1] 超選択的Wada testによるオーダーメイド的局所脳機能評価

大沢伸一郎1, 鈴木匡子2, 浮城一司3, 柿沼一雄2, 上利大3, 新妻邦泰1,4, 神一敬3, 浅黄優5, 中里信和3, 冨永悌二1 (1.東北大学 大学院 医学系研究科 神経外科学分野, 2.東北大学大学院 医学系研究科 高次機能障害学分野, 3.東北大学大学院 医学系研究科 てんかん学分野, 4.東北大学大学院 医工学研究科 神経外科先端治療開発学分野, 5.東北大学病院 生理検査センター)

背景・目的
従来てんかん外科における内頚動脈Wada test(ICA-Wada)は、主に失語症状を惹起することで直接的な言語機能半球同定を可能とし、脳実質切除に伴う機能リスク評価の先駆けとなった。しかしその機能判定は半球領域に及んでおり実際の切除領域に対応した局所症状ではないこと、もしくは穿通枝領域、ウィリス動脈輪の個体差によって薬剤分布と症状との関係が明確でないことなどが検査限界として存在する。さらに機能的MRIや脳磁図など非侵襲的評価法の進歩があり、侵襲的検査であるICA-Wadaの適応は徐々に限られてきている。一方で頭蓋内電極留置による事象関連活動計測や電気刺激による脳機能マッピングは時間的、空間的精度の高い機能情報を得られるが、開頭術を必要とする高度な侵襲性と電極留置部のみの情報に限られる空間的制限、さらに数cm以上の切除領域に対する容積効果としての機能リスクは判断しづらい。以上のような臨床的要求から、我々は脳血管内治療の技術を応用した超選択的Wada test(S-Wada)を開発して任意の切除領域に対する機能リスクを評価している。
方法
主に言語機能領域を含む切除領域が推定される症例、もしくは術前高次機能が保たれており、広範囲切除に伴う機能低下が予期しがたい症例に行っている。検査はMRA等で推定された血管支配を元に、脳血管内治療の手法を用いてヘパリン化した後に頭蓋内動脈(M2-M3,A2,P2など)へマイクロカテーテルを誘導、プロポフォールを局所動注して灌流領域に対応する神経学的診察および言語機能、記銘力を評価する高次機能課題を行う。また施行にあたって頭皮脳波を10-20法に従い装着、注入時の電気生理学的モニタリングを行っている。
結果
本検査を適応した連続25症例について、手技に際して永続的な神経学的合併症はなかった。全例で意識障害を生じず、運動障害、知覚異常、失語、構音障害、半側無視などの局所神経症状を診断可能であった。また被験者本人も検査結果を理解しており、内観の変化を表現可能であった。脳波変化は全例で確認され、薬剤注入の確認および症状消失との関連を評価可能であった。古典的理解による左右差明瞭な機能局在を示さない症例が複数存在し、手術方法へ影響した。頭蓋内電極留置による機能マッピングを行った12例では、全例でS-Wadaと矛盾しない所見を得た。
結語
S-Wadaによる任意の脳領域に対する機能評価方法を確立した。安全性は確立されており、従来機能リスク不明瞭であった症例に対し外科適応拡大に貢献すると期待される。正確な超選択的血管内投与と灌流領域および機能評価の連携が不可欠であり、今後症例の蓄積と検査方法の定型化、プロトコール化が望まれる。