日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー10

2020年11月27日(金) 13:45 〜 14:15 第3会場 (2F B-2)

座長:大沢 伸一郎(東北大学 大学院 医学系研究科 神経外科学分野)

[AL10-2] ミオクローヌスてんかん

人見健文1,2, 小林勝哉2, 高橋良輔2, 池田昭夫3 (1.京都大学 大学院 医学研究科 臨床病態検査学, 2.京都大学 大学院 医学研究科 臨床神経学, 3.京都大学 大学院 医学研究科 てんかん・運動異常生理学講座)

ミオクローヌスてんかんは、不随意運動としての皮質性ミオクローヌスとてんかん発作を呈する症候群である。ミオクローヌスてんかんは、主に進行性ミオクローヌスてんかん(Progressive myoclonus epilepsy: PME)と類縁疾患である良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(benign adult familial myoclonus epilepsy: BAFME)からなっている。PMEは、不随意運動としてのミオクローヌス,てんかん発作としてのミオクロニー発作および全般強直間代発作,小脳症状,認知機能障害・精神発達遅滞を4徴として進行性の経過を呈する遺伝性疾患群である。Unverricht-Lundborg病(ULD)、Lafora病、Neuronal ceroid lipofuscinosis(NCL)、Sialidosis、Myoclonic epilepsy with ragged red fibers、Dentatorubral-pallidoluysian atrophy(DRPLA)の若年型など多種の疾患で生ずる。いずれも比較的若年で発症することが多い。身体所見では、網膜色素変性やcherry red spotなどの眼底異常、肝脾腫を一部の疾患で認める。検査所見では、酵素活性測定や生検による病理学的検査が一部の疾患で診断上有用である。脳波検査では、全般性の多棘徐波複合・棘徐波複合、後頭部優位律動の徐波化、光突発反応の出現などを認めることが多い。体性感覚誘発電位(somotosensory evoked potentials: SEPs)での巨大化した早期皮質成分(giant SEPs)も特徴的である。ただしDRPLAではgiant SEPsを認めないことがむしろ特徴である。頭部CT・MRIでは大脳・小脳の萎縮を認めることが多い。多くの疾患で原因遺伝子が解明されてきており、臨床診断としても用いられている。成人発症で比較的頻度の高いBAFMEは以下の特徴を有する。皮質振戦と希発全般発作を主徴とする浸透率の高い常染色体優性遺伝を呈する。加齢にともなう皮質興奮性の増大と皮質振戦の進行を認める。最近、原因遺伝子とそのイントロンにおけるリピート数の異常伸長が明らかになった。ミオクローヌスてんかんの治療薬は、各種の抗てんかん薬(バルプロ酸・クロナゼパム)・抗ミオクローヌス薬(ピラセタム)が用いられているが、必ずしも十分な効果が得られず予後不良である疾患も多い。ゴーシェ病では、酵素補充療法、基質合成抑制療法などが行われている。近年、AMPA型受容体阻害剤であるペランパネルがてんかん、ミオクローヌス両者に有用であると報告された。