50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー16

Sat. Nov 28, 2020 9:45 AM - 10:15 AM 第4会場 (1F C-1)

座長:有村 公良(大勝病院 脳神経内科)

[AL16-1] 振戦・ジストニアの機能外科

橋本隆男 (相澤病院 脳神経内科)

1940年代に始まった運動障害に対する定位脳手術の歴史の中で,2000年以前は凝固術が主に行われ,2000年以後は深部脳刺激術(deep brain stimulation, DBS)の件数が増え,近年では運動障害に対する機能神経外科のほとんどがDBSで行われるようになった。また、侵襲の少ない治療法としてガンマナイフを用いた凝固術が1990年代に開始され、近年,集束超音波療法が開発され主に振戦に対して行われるようになってきている。凝固術とDBSの作用機序は,手術部位において不随意運動を駆動する異常神経発火を消すと考えられる。振戦とジストニアは,パーキンソン病の運動症状と並んで代表的な機能神経外科の適応となる不随意運動である。外科的治療の適応となる振戦のタイプは主にパーキンソン病でみられる安静時振戦と本態性振戦,小脳性振戦でみられる動作時振戦である。振戦の発生に関連する脳の構造は,安静時振戦は大脳基底核運動回路が主で小脳‐視床‐大脳皮質系も関与しており,本態性振戦と小脳性振戦は,小脳‐視床‐大脳皮質系が主に関連すると考えられている。手術ターゲットは振戦の発生源あるいはその経路にあり、安静時振戦は大脳基底核運動回路の中で視床下核,淡蒼球内節,小脳系の視床中間腹側核(ventral intermediate nucleus、Vim核)とposterior subthalamic area(STA)である。本態性振戦と小脳性振戦のターゲットはVim核とSTAである。ジストニアの機能外科は症状の身体分布に基づく型と病因によって有効性や手術ターゲットが異なることが明らかになってきている。病因別では,孤発性ジストニアでかつ病理や放射線検査で神経変性像や器質的変化がないprimaryジストニアは器質的変化のあるsecondaryジストニアに比べて機能外科の有効性は高い。Primaryジストニアの中でもDYT1遺伝子変異のある群は本遺伝子変異のない群に比べるとさらに有効性は高く、DYT1では若年時に手術適応となることが少なくない。Secondaryジストニアも機能外科が有効な疾患があることが知られてきている。機能外科の対象となる身体領域別の病型は,Meige症候群,痙性斜頸,書痙を含む手のジストニア,全身性ジストニアが多いが,各病型ともに手術効果はおおむね病因別の効果に従う。ジストニアの手術ターゲットは主に基底核系の淡蒼球内節が選択される。書痙については視床の高い有効性が報告されているが,視床内の領域についてはVim核か基底核から入力を受ける視床前核群かあるいは両者かは未解決である。