[AL16-2] myotonia、周期性四肢麻痺
Myotonia、周期性四肢麻痺は筋チャネロパチー(Channelopathy)であり、細胞膜に存在する様々なイオンチャネルのサブユニットやイオンチャネルに関係する他のタンパク質の機能が障害されて発症する疾患である。それぞれの疾患は特徴的な臨床所見、症状を示すが、時に症状のオーバーラップが見られ、その診断に電気生理学的検査が必要となることが少なくない。またその病態の本質である異常なチャネル蛋白の予測にも有用である。(1)ミオトニー症候群 針筋電図でmyotonic discharge(MyD)を認める。しかしMyDは様々な疾患で見られ、筋電図のみでの鑑別は出来ない。筋強直性筋ジストロフィーでは典型的臨床症状と遠位筋有意なMyDで診断は可能であり、DMPKの遺伝子診断で確定する。しかし典型的な臨床症状を有しない場合は先天性ミオトニー、先天性パラミオトニー、Naチャネルミオトニーなどとの鑑別が必要となる。針筋電図ではMyDの分布や筋原性変化の有無などが重要となるが、多くの場合次のステップであるexercise tests(ET)を行う。ETには短時間の運動負荷や冷却負荷を加えて、電気刺激によるCMAPの変化から筋の興奮性を評価するshort exercise test(SET)およびcooling test(CET)と、やや長い運動負荷を加えた後CMAPの変化を見るprolonged exercise test(PET)がある。ETは運動負荷を加え筋線維膜を脱分極させる事によって生じる、脱分極性ブロックをCMAPの変化として捉える検査法である。MyDの発生にはClチャネル(CLCN1)やNaチャネル(SCN4A)が関与している。このClチャネルミオトニーとNaチャネルミオトニーの鑑別にはSETおよびCETが有効である。SETを3回繰り返し、そのパターンからFournierら(2006)は3つのパターンに分類し、それぞれ可能性の高い遺伝子変異が予測できることを報告している。しかし、変異部位によってはパターンが異なる事にも注意が必要である。ちなみにDMPKも最終的にはClチャネルを介してMyDを引き起こすと考えられている。(2)周期性四肢麻痺臨床的に周期性四肢麻痺を呈する症例でもまず針筋電図でMyDの有無を検索する。その後PETで臨床的な麻痺に対応する運動負荷後のCMAPの低下が起こるか否かを調べる。低K血症のような二次性周期性四肢麻痺でも、発作時には陽性となることがあるため、検査は発作のない時期(interictal state)に行うことが必要である。MyDが見られればSCN4Aの変異が考えられ、もし見られなければCACNA1Sの変異がより考えられる。 近年網羅的遺伝子解析で遺伝子異常の診断が迅速かつ容易になってきた。しかしまだ検査可能な施設は限られており、実臨床の場では電気生理診断の有用性は変わっていない。電気生理学的異常の機序を考えながらシステマティックに検査を行うことが重要である。