50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー17

Sat. Nov 28, 2020 11:30 AM - 12:00 PM 第4会場 (1F C-1)

座長:牛田 享宏(愛知医科大学医学部学際的痛みセンター)

[AL17-2] 疼痛に対する脊髄刺激療法の現状

大島秀規 (日本大学医学部 脳神経外科学系神経外科学分野)

近年、神経障害性疼痛に対する薬物治療ガイドラインが策定され、試行錯誤の多かった神経障害性疼痛の薬物治療をevidence-based に行うことが可能となってきた。しかしながら、薬物療法単独では神経障害性疼痛のコントロールは困難なことが少なくない。神経障害性疼痛のニューロモデュレーションを中心とする外科的治療の代表として脊髄刺激療法(spinal cord stimulation: SCS)がある。外科的治療は、かつては“疼痛治療の最終手段”のような位置づけであった。しかしながら近年では、早期にSCSを導入して薬物療法と並行して疼痛をコントロールすることが、より効果的であることか知られるようになり、疼痛の発症から比較的短い期間SCSを導入することが多くなってきている。神経障害性疼痛を主訴とする様々な疼痛性疾患がSCSの対象となるが、従来のSCS(比較的低頻度のtonic刺激)では、障害部位が中枢より末梢にあること、脊髄後索の障害が無いか軽度であること、痛みのある身体部位が四肢(体幹は無効例が多い)などのケースが奏功しやすい傾向にある。SCSが有効なことの多い代表的な疼痛として、頚部・腰部の脊椎手術後の四肢の神経障害性疼痛(FNSS / FBSS)、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、末梢神経損傷後の神経障害性疼痛、外傷性(神経根引き抜き損傷を除く)および放射線療法後の腕神経叢損傷などがあげられる。近年では、ASO等に伴う下肢の疼痛や難治性の狭心痛などの末梢血管障害に起因する難治性の疼痛にも高い有効性が報告されている。一方で、完全脊髄横断損傷後の疼痛、神経根引き抜き損傷による疼痛などは脊髄後索系の障害を伴っており脊髄刺激療法が無効であることが多かった。近年、1Khz以上の高頻度またはburst刺激が可能なデバイスが上市され、比較的低頻度(< 200Hz)のtonic 刺激に比べて良好な疼痛改善効果(疼痛の更なる軽減効果や、体幹部の疼痛に対する有効性の向上など)が報告されつつある。また、従来の比較的低頻度のtonic 刺激では、奏効率を上げるためには疼痛のある身体部位全体に刺激によるparesthesiaを誘発する(superposition)ことが肝要であったが、新規デバイスではparesthesia-free(刺激感覚を誘発する閾値以下の強度で刺激)での疼痛改善効果が報告されている。これらの従来の低頻度刺激とは異なる臨床効果は、異なる刺激法による疼痛改善の機序の違いによると考えられている。本講演では、新規刺激法(高頻度およびburst 刺激)と従来の低頻度tonic 刺激との臨床効果の違いを、刺激法の違いによる疼痛改善機序の違いと合わせて概説する。