日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー18

2020年11月28日(土) 13:30 〜 14:00 第4会場 (1F C-1)

座長:安原 昭博(安原こどもクリニック/YCCこども教育研究所)

[AL18-1] 自閉スペクトラム症の臨床神経生理

高橋秀俊 (高知大学医学部寄附講座児童青年期精神医学)

本講演では、自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder: ASD)の臨床神経生理、特に近年注目されている非定型的な感覚情報処理特性に関して、主に聴覚過敏について、臨床での影響や評価法、支援法などについても説明し、今後の研究の方向性について論じる。ASDをもつ人の多くは非定型的な感覚情報処理特性をもつ。ASDの非定型的な感覚情報処理特性に対する認識は近年高まっており、最近はASDの中核症状の徴候の一つに含まれている。
非定型的な感覚情報処理特性はASDをもつ人やその支援者を悩ませ、ASDで問題となる他の症状や行動にも影響する。年齢や自閉症の重症度は非定型的な感覚情報処理特性の程度に影響し、6-9歳の児童期や自閉症の診断を有するもので、最も重篤であると報告されている。
ASDの感覚情報処理特性は、親面接式自閉スペクトラム症評定尺度(PARS)や発達障害の特性別評価法(MSPA)といったASDに関する包括的評価尺度でも簡便にチェックできる。感覚プロファイルのように感覚の特徴に特化した評価尺度を用いれば、ASDの非定型的な感覚情報処理特性に関して、より詳細に評価できる。ASDの感覚情報処理の神経生理学的指標は、診断や支援のモニタリングに有用なASDのバイオマーカーとして、非定型的な感覚情報処理特性の生物学的病態解明につながるであろう。
ASDの感覚情報処理特性の問題への支援として、個々のニーズに合わせた環境調整や感覚統合療法などがある。これらの支援の有効性は経験的に知られているが、その効果を適切に評価するには、さらに研究が必要で、薬物療法など非定型的な感覚情報処理特性がもたらす問題の軽減のための他の方法も研究される必要がある。
以上のように、ASDの非定型的な感覚情報処理特性は、ASDの研究デザインや臨床実践において考慮すべき重要な要素である。今後の研究は、ASDの病態解明や有効な支援法の開発にも貢献するであろう。