[AL18-2] ADHDの脳機能障害の特徴
ADHDは集中障害と多動・衝動性を主症状とする神経発達症である。発症要因は脳機能障害である事が明らかで、遺伝的な要因が多いとされる。ADHDの研究は脳波やMRIを用いて脳機能的な研究が行われてきた。1)ADHDにおける脳の形態的異常ADHD児における脳容積のメタ解析が行われ、ADHD患者では小脳虫部、脳梁膨大部、総大脳容積、小脳、尾状核、さらには前頭前野、前頭葉、深部前頭白質の部位の容積が有意に小さいことが明らかになった(Valera EM, 2007)。ADHDでは、脳容積の低下が見られる。また、ADHD児(平均10.2歳)と同年齢の対照群の脳の皮質の厚さをMRIにて測定し、皮質の厚さのピーク年齢を求めた研究では、大脳皮質領域の50%が厚さのピークに達する年齢の中央値は対照群で7.5歳、ADHD群で10.5歳であり、ADHD群は有意に皮質の成熟が遅れていた(Shaw P、2007)。特に、認知機能をつかさどる前頭皮質の遅れが著しかった。2)ADHDにおける神経生理学的異常A. 実行機能課題の問題点ADHD患者の神経活性を実行機能課題遂行時にfMRIやPETで測定した16試験をメタ解析した(Dickstein SG, 2006)。結果、前頭皮質―線条体及び前頭皮質―頭頂野の神経回路の活性が有意に低下していることが確認された。なかでも、前頭前野の機能不全は広域にわたり、前帯状回皮質、背外側前頭皮質、下前頭皮質、眼窩前頭皮質で活性が低く、また、基底核や頭頂皮質でも有意な低下がみられた。ストループ課題を実施した時の脳の活性の度合いをfMRIで測定した(Bush G, 1999)。健常人ではADHD患者に比べ有意に高い前帯状回の活性がみられた。一方、ADHD患者では島の活性がみられた。このようにADHD患者では前帯状回の機能不全が存在する。B. ADHDにおける脳内報酬系の問題点ADHD患者に、報酬の期待を与える課題を実施させ、その時の腹側線条体(側坐核)の活性化fMRIを用いて血流の酸素濃度(BOLD)から測定した(Scheres A, 2007)。結果、対照群では腹側線条体の活性がADHD群よりも有意に大きく認められた。脳画像研究からもADHD患者の報酬系機能異常が確認された。AD/HDの症状は、実行機能回路と報酬系回路の両方の異常が関与していると考えられる。神経生物学的基盤において実行機能回路の異常が生じ、そのため心理学的過程では抑制の欠如が現れ、行動の統制が得られず、実行機能不全として評価される。3)ADHDにおける脳波異常の問題点 ADHD児の脳波検査を行ったところ39%に棘波が認められた。これらの小児に対して抗てんかん薬を使用したところ棘波が消失し症状の改善が認められた。ADHDの発症に発作性脳波異常が関係することが考えられる。