50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー19

Sat. Nov 28, 2020 2:45 PM - 3:15 PM 第4会場 (1F C-1)

座長:川上 治(安城更生病院 脳神経内科)

[AL19-1] ICU-AW

山本大輔 (札幌医科大学 医学部 神経内科)

 重症疾患の罹患後に筋力低下が生じることが古くより知られており,intensive care unit-acquired weakness(ICU-AW)と呼ばれている.ICU-AWはcritical illness myopathy(CIM), critical illness polyneuropathy(CIP),その両者を合併するcritical illness neuromyopathy(CINM)を包括した疾患概念である. CIMが最初に報告されたのは1977年で,気管支喘息重積後に発症した重症ミオパチーであった.その後1984年に敗血症と多臓器不全に重度の運動感覚ニューロパチーを合併した5例が報告され,のちにCIPと名付けられた.システマティックレビューによると,成人ICU入室患者の約半数にICU-AWの発症リスクがある.診断にはしばしばStevensらの基準が用いられ,1)重症疾患罹患後に発症した全身の筋力低下,2)筋力低下はびまん性(近位および遠位の両方),左右対称性,弛緩性であり,一般的には脳神経は回避される,3)24時間以上あけて2回以上計測した,MRC合計スコア<48または平均MRCスコア<4,4)人工呼吸器に依存,5)他の原因の除外,のうち,1)2)5)と3)または4)を満たしたものがICU-AWと診断される.CIM,CIPの診断基準はLatronicoらによって提唱され,電気生理検査での異常所見が必要となる. ICU-AW発症の危険因子としては,システマティックレビューによりSIRS,敗血症,高血糖,腎代替療法,多臓器不全,カテコラミンの使用が挙げられており,神経遮断薬もメタ解析によって関与が示されたが,ステロイドの関与は明確ではない.CIPの病態には微小循環不全による軸索障害が考えられている.蛋白異化亢進,炎症や酸化ストレスによる筋障害やCa2+恒常性の変化による興奮収縮連関の障害はCIMに関与する.Naチャネルの機能異常は膜の興奮性低下をもたらし,CIP,CIM,あるいはその両者に関与する.NCSでは,CIPであればCMAPおよびSNAPの低下を認め,一般的な軸索障害型polyneuropathyの所見となる.CIMは持続時間の延長を伴ったCMAPの低下を認める.CIMではSNAPは保たれ,反復刺激試験では正常である.針筋電図は発症後10日から2週間程度で刺入時電位や自発電位が見られるようになる.随意収縮ではCIPは脱神経所見,CIMはミオパチーの所見となる.direct muscle stimulationでは誘発波形の多相化や持続時間の延長が報告されている.加速度計を用いた我々の検討では,発症早期から興奮収縮連関が障害されることが示された.現時点でエビデンスレベルの高い治療法はないが,発症早期からのリハビリテーションによってICU-AWの進行を予防できる可能性がある.