日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー19

2020年11月28日(土) 15:15 〜 15:45 第4会場 (1F C-1)

座長:川上 治(安城更生病院 脳神経内科)

[AL19-2] ビデオ脳波モニタリングの実際

臼井直敬 (NHO静岡てんかん・神経医療センター)

ビデオ脳波モニタリングは、てんかん診断の確定,発作型の診断に最も重要な検査である。発作頻度の評価、治療効果判定にも有用であり、それまで気づかれなかった発作型の存在が明らかになることや、発作型の診断が修正されることもある。また、てんかん発作と非てんかん性の症状との鑑別にも有用である。ビデオ脳波モニタリングでは、専用の個室(Epilepsy monitoring unit: EMU)で、医師,脳波技師,発作の際の処置や観察を行う看護師の協力体制のもと、3~7日間くらい連続してビデオと脳波の記録を行う。検者が介入し、意識状態、記憶、言語機能などを発作中、発作後に評価することは必須である。そのためには前兆を感じた際にコールボタンを押してもらうことや、発作波の自動検出システムの利用が有効である。モニタリング中は発作捕捉のために抗てんかん薬の減量が必要なことが多いが、急な減量により焦点起始両側強直間代発作などが起こりやすくなることがあり注意が必要である。また,発作の遷延や重積の可能性にも留意する。その他,発作による外傷、発作後の精神症状なども起こりうる。まれではあるがモニタリング中の死亡例も報告されている。記録された発作症状は発作の起始側、起始領域について多くの示唆を与える。適切な発作時、発作後の介入が重要である。また、発作時脳波の解析の際には発作症状との対応を常に考慮すべきである。全般発作の発作時頭皮脳波は2パターンに大別され、1つは強直間代発作に代表される、当初振幅を増しながら周波数を減じる律動性の速波活動がみられ、発作の後半から終焉に向けて徐波活動が優位となるパターン、もう1つは欠神発作に代表される、発作起始時から律動性過同期性の棘徐波がみられるパターンである。これらの2パターンでは、発作起始、伝播のメカニズムも大きく異なっていることが示唆される。焦点発作の発作時脳波は,典型的にはβ,α,あるいはθ帯域の律動波,あるいは反復する棘波・鋭波であり、周波数,分布,振幅が進展(evolution)していくのが特徴である。全般性,あるいは一側性の背景の抑制が先行することもある。しばしば臨床症状の開始が脳波上の開始に先行する。焦点発作保持発作では発作時脳波変化がみられないことが多い。焦点意識減損発作の約10%でも、明らかな脳波変化がみられない。覚醒による脳波変化(脳波の平坦化)と発作時変化との区別は容易でないこともある。発作後の徐波は,発作の側方性、局在性の診断に有用である。発作時の脳波変化が頭皮上で捉えられる段階では、すでに発作発射は発作起始域からある程度広がっているものと考えられるので、てんかん外科の術前評価におけるてんかん原性の局在推定においては、発作時脳波のみならず、病歴、発作症状、発作間欠期脳波、神経画像、神経心理なども含めて、総合的に判断すべきである。