日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー2

2020年11月26日(木) 09:25 〜 09:55 第4会場 (1F C-1)

座長:大倉 睦美(朝日大学 歯学部 総合医科学講座 内科学/朝日大学病院 睡眠医療センター・脳神経内科)

[AL2-1] てんかんと睡眠関連疾患

茶谷裕1,2,3, 立花直子1,3 (1.関西電力医学研究所 睡眠医学研究部, 2.松本内科胃腸科, 3.関西電力病院 睡眠関連疾患センター)

睡眠とてんかんの関係は広く知られたところであり、2014年に発刊されたAmerican Academy of Sleep Medicineによる睡眠関連疾患国際分類第3版(ICSD-3)には、“睡眠関連てんかん”の項目で解説がなされている。主に睡眠中におこるてんかんとしては、睡眠関連過運動てんかん(SHE)の他、小児では中心側頭部に棘波を示す自然終息てんかん(BECT)、自然終息性小児後頭葉てんかん、徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん(ECSWS)などがある。覚醒後に生じやすいてんかんとしては、若年ミオクロニーてんかん(JME)が代表的である。また、側頭葉てんかんは朝と夕方に発作が起きやすく、後頭葉てんかんは午後に発作が多いことも報告されている。このように、概日リズムの影響を受けるてんかんは睡眠関連てんかんだけではない。そのため、てんかんの特性を、1.睡眠覚醒リズム、2.睡眠ステージ、3.その他の要素の影響(睡眠時間不足、睡眠時無呼吸症候群(SAS)など)という3つの視点から見直すことを試みた。睡眠ステージとの関連については、焦点性てんかんを対象にした解析ではREM睡眠期に発作が少ないことが示唆されている(Ng and Pavlova. 2013)。睡眠時間不足の影響については、焦点性てんかんにおいて断眠後に焦点側半球で皮質興奮性が増加するという報告があり(Badawy et al., 2006)、特発性全般てんかんであるJMEでも断眠後の皮質興奮性の増加が示唆されている(Manganotti et al., 2006)。SASとの関連については、成人てんかん患者では男性の約2割、女性の約1割に閉塞性SAS(OSAS)が合併しており、更に難治性てんかんではその合併率は3割に上昇することが報告されている(Malow et al., 2000)。特に高齢てんかん患者においてSASの合併は発作コントロールの悪化を来すことから注意が必要である。てんかん発作の除外診断として睡眠時随伴症(パラソムニア)の鑑別は重要である。ノンレム睡眠関連睡眠時随伴症は、主に深睡眠(N3)期からの突然の不完全な覚醒による異常行動であり、睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症、錯乱性覚醒に分類される。不完全な覚醒を反復し、外的刺激には反応がないか混乱がみられ、しばしばPSGでの鑑別を要する。睡眠薬、アルコール、OSAなどが増悪因子である。レム睡眠関連睡眠時随伴症の代表はレム睡眠行動異常症(RBD)であり、αシヌクレイノパチーとの関連が示唆されている。また、head rollingなどの一定のリズムで反復する運動を特徴とする睡眠関連律動性運動異常症や、睡眠時ひきつけなどの睡眠関連運動異常症が鑑別で問題となることもある。当院ではナルコレプシー1型(情動脱力発作を伴う)が他院でてんかんと診断されていた例を経験しており、動画を交えて呈示する。