日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー20

2020年11月28日(土) 16:30 〜 17:00 第4会場 (1F C-1)

座長:稲葉 彰(関東中央病院脳神経内科)

[AL20-2] 腕神経叢:解剖とその障害

野寺裕之 (金沢医科大学 医学部 神経内科学)

腕神経叢は一見複雑な構造に見えるため,解剖が苦手な人が多いが,順序だてて理解すれば決して困難な対象ではない.その基本構造はC5/C6, C7, C8/T1が形成する3本の神経幹とその延長としての3本の神経束である.神経幹と神経束障害の鑑別に重要なポイントは以下の通りである.(1)上神経幹と外側神経束はともに筋皮神経が通過するため,上腕二頭筋の脱力が共通である.腋窩神経は上神経幹を通過するが,外側神経束を通過しないため鑑別に有用である.(2)下神経幹と内側神経束はともに尺骨神経が通過するため,小指外転筋などが共通して脱力をきたす.橈骨神経の示指伸筋を支配する線維は下神経幹を通過するが内側神経束を通過しないため示指伸筋の筋力により両者が鑑別できる.腕神経叢障害をきたすいくつかの特徴的疾患があるので簡単に述べる.(1)遅発性放射線障害(ミオキミアが特徴的),(2)胸骨正中切開後のC8部優位障害,(3)純粋神経型胸郭出口症候群腕神経叢と神経根障害の鑑別に有用なのは感覚神経伝導検査による振幅である.Uncommon神経からの検査が多いことで正常値の構築が困難なことから,同じセッティングにしたうえでの両側振幅を測定することが鍵となる.