日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

アドバンスレクチャー

アドバンスレクチャー6

2020年11月26日(木) 15:50 〜 16:20 第4会場 (1F C-1)

座長:齋藤 洋一(大阪大学大学院 医学系研究科 脳神経機能再生学/大阪大学大学院 医学系研究科 脳神経機外科)

[AL6-2] 筋の超音波検査

高松直子, 山崎博輝, 和泉唯信 (徳島大学病院)

筋疾患の診断は通常、臨床症状、血液検査、筋電図によっておこなわれ、確定診断は筋生検である。画像診断としては、MRIやCTが一般的ではあるが、それらに対しエコーはベッドサイドでも施行することができ、一度の検査で広範囲に見ることが可能である。最近の超音波装置の解像度は優れており、筋組織0.1mmのレベルでの解析が可能であるといわれている。骨格筋の構造は筋束が集まって一つの筋を形成している。その周囲は筋膜で覆われ、それぞれの筋の境界は筋膜によって区別され、筋線維束の周囲は周膜によって覆われている。主な評価項目は輝度、筋の厚み(萎縮,肥厚)、fasciculationなどである。短軸像で輝度、筋の厚みを観察し、長軸像で筋の線維様の形状を観察する。最近では筋の硬度を、エラストグラフィーを用いて計測することが可能である。また、筋膜や筋実質の血流を観察することにより炎症度を推測することが可能であるが、臨床的意義の確立には至っていない。また特殊なソフトを使ってテクスチャー解析を行い,、筋障害が筋原性であるか神経原性であるか区別する方法も試みられている。観察する筋は頸部、四肢などであるが、必要に応じて後頸部、腹部、背部なども観察する。プローブは7.5-12MHzのリニア型を使用し、プリセットはMuscle、MSK、Carotidで行うとよい。プロ―ブはかならず皮膚表面に対して垂直に当てる必要がある。斜めに当てると輝度が低下してしまうため注意が必要である。筋の厚みは20-40歳でピークになり、その後は萎縮する。その傾向がより強いのは大腿四頭筋で、上腕二頭筋での年齢差はそれより少ない。急性の筋炎や一部の筋疾患では筋の肥厚あるいは浮腫を生じる場合があるが、多くの筋疾患では萎縮するため、超音波検査にて筋厚の減少を検出する事が重要である。輝度については筋膜や周膜は高輝度に描出されるが、それ以外の筋線維そのものは通常は低輝度に描出される。正常の場合でも年齢によって輝度の変化がみられ、20-40歳で低輝度になり加齢とともに上昇する。これらの超音波所見は主に筋炎などの筋疾患の診断に有用である。多発筋炎などの急性の筋炎では輝度上昇が重要な所見となる。筋炎の慢性期や封入体筋炎では筋萎縮および筋の脂肪置換がおこり筋線維は消失し輝度は著明に上昇する。また、限局された筋のみが障害されることが特徴的な封入体筋炎や筋強直性ジストロフィーなどの診断には筋エコーが有用である。その他、サルコイド結節の有無を確認することにより、筋サルコイドーシスの補助診断や筋生検の部位を決定に役立つ。また、fasciculationの有無を見ることにより運動ニューロン疾患の補助診断にもなりうる。