[AL8-1] 脳腫瘍切除時の機能的な摘出限界線の術中判断
【目的】病巣切除がeloquent cortex / fiber近傍に及んだ際は、適切な機能同定、切除が必要である。通常皮質運動言語機能マッピングには高周波脳電気刺激(ES)による機能抑制(言語・運動機能)、筋収縮(MEP)を観察している。運動野近傍、言語野皮質が不明瞭な症例では、覚醒下手術により頭蓋内電極を留置して脳表電位の高周波律動(HGA)のリアルタイム処理技術により、運動・言語機能局在を短時間に行っている。さらに白質の切除時には拡散テンソルMRI(DTI)による線維画像化(tractography)と白質ES,によるMEP、言語機能障害をeloquent fiber mappingを併用することで、機能温存を行っている。【方法】頭蓋内疾患をもつ80症例を対象とした。DTIデータよりeloquent fiber tractographyを作成しナビゲーション装置に表示した。皮質ES-MEP、運動誘発HGA,言語関連HGAの検出に加え、白質ES-MEPと言語機能障害を行った。Functional fiberと切除腔との距離を計測した。【結果】刺激部位が皮質脊髄路より20mm以内の18例で20mAの白質ESでMEPを認めた。運動野近傍の動脈の一時的な狭窄により、皮質ES-MEPの振幅が一時上昇し、その後消失する例を3例経験した。また、距離と刺激強度には相関があり、白質ES-MEP閾値は2mAと推定され、皮質ES-MEP閾値(平均17mA)よりも有意に低かった。切除が弓状束まで5mm以内に及んだ際の白質ESにより発語障害が出現した。術後DTIでは切除腔の周辺に平均3.5mmの虚血巣を認めた。このため白質ESの結果を考慮すると、切除境界は機能野の5mm手前が安全な境界線と考えた。一方、HGAによる皮質機能局在は運動・言語関連皮質マッピングでは感度・特異度とともに85-90%であった。【考察】本検討のeloquent functional mappingでは、虚血合併症として5mmの安全域の考慮と基本的な電気生理学現象の解釈が必要であった。またHGA検出によるpassive mappingは、より効率的に脳底部を含めた広い脳皮質機能局在を短時間に行える有用な方法であった。