50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ベーシックレクチャー

ベーシックレクチャー10

Fri. Nov 27, 2020 2:30 PM - 3:00 PM 第2会場 (2F B-1)

座長:重藤 寛史(九州大学医学部保健学科/九州大学病院 脳神経内科)

[BL10-1] 小児の脳波からわかること(正常脳波)

夏目淳 (名古屋大学 大学院医学系研究科 障害児(者)医療学寄附講座)

小児期の脳波所見は年齢、脳成熟とともにダイナミックに変化する。そのため小児の脳波を判読する際には、年齢に対応した正常脳波の特徴を把握しておく必要がある。また脳成熟に伴う脳波変化を評価することは、小児患者の病態に関わる情報を得ることにもなる。さらには検査に協力の得られにくい乳幼児や知的障害・発達障害を持つ小児では、脳波を記録するためのコツや注意事項が存在する。本講演では小児の脳波評価において重要な要素について解説する。早産児の脳波は出生予定日頃まで2週間単位で所見が変化し、その遅れは脳の成熟遅延の指標となる。早産児で栄養不良、体重増加不良のある児では脳成熟にも遅延が診られることが報告されている。乳児では、大脳白質の髄鞘化が不十分な乳児期早期には紡錘波の左右非同期が目立ち、白質の成熟に伴い左右の同期性が増し脳内のネットワークの発達が進むことが観察できる。小児期から成人にいたる脳波では、年齢とともに後頭部優位律動の周波数が上がる。また頭頂部一過性鋭波などは成人期よりも振幅が高く、入眠期過同期hypnagogic hypersynchronyなど小児特有にみられる波形もある。成人脳波に慣れた判読者はこれらの所見を異常と判定し舞う可能性があり注意が必要である。小児で脳波を記録する際に知っておくと良い点として以下のことが挙げられる。後頭部優位律動を記録するためには安静・覚醒・閉眼を保つ必要がある。乳幼児や発達遅滞のある小児では自発的に閉眼をするのが困難なため検者か保護者による受動閉眼を行うと良く、合わせて小児がリラックスしやすい環境を整えるのが良い。また睡眠脳波を記録するためにトリクロホスナトリウムシロップの服用が行われる場合があるが、睡眠深度が深くなりすぎて所見の判読が困難になる場合もあり、できるだけ自然睡眠しやすいように検査の時間帯の選択や検査日の早朝覚醒、来院までに眠らない工夫などを行い睡眠薬の使用は最小限にすることが重要である。