日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

ベーシックレクチャー

ベーシックレクチャー13

2020年11月28日(土) 08:30 〜 09:00 第3会場 (2F B-2)

座長:尾崎 勇(青森県立保健大学 健康科学部 理学療法学科)

[BL13-1] 体性感覚誘発電位(SEP)の基礎:パターン認識しよう

大石知瑞子1, 園生雅弘2 (1.杏林大学 医学部 脳神経内科, 2.帝京大学 医学部 脳神経内科)

SEPは感覚伝導路を経て大脳皮質に伝わる間に惹起される電位を記録する検査であり、末梢から脊髄を経て大脳皮質までの感覚経路の評価が可能である。末梢は末梢神経伝導検査(NCS)、中枢の評価はMRIなどの画像検査で十分だろうと考えるかもしれないが、我々はNCSと画像検査では異常がなく、SEPで異常を指摘できた症例を多く経験している。しかし、SEPが臨床現場で流行らない理由は、モンタージュの選択がわからない、結果の判断ができない、などではないか? SEPで電位の発生源、その理由を考え、理解することは重要である。しかし、まずBasic SEP は、検査を臨床に役立てることが最大重要ポイントであり、これはある程度パターン認識で可能である。モンタージュは、上肢は2019年臨床神経学会より出版された誘発電位測定マニュアルのB案(4チャンネル誘導)、下肢は臨床神経生理学会が出版しているモノグラフ「脳機能計測法を基礎から学ぶ人のために」記載の5チャンネル誘導の利用、マーク位置、正常値は園生先生提唱(星和書店から出版、神経筋電気診断の実際)を利用するのはどうだろう。【上肢SEP】Epi-REF:N9(Erb点での末梢神経活動電位)、マークはN9o(onset)C5S(C6S)-Fz:N11’(頚髄後索を上行する成分)、マークはN11’o(onset)CPc-REF:P13/14(内側毛帯の伝導開始)、マークはP13/14o(onset)CPc-Fz:N20(皮質成分)、マークはN20o(onset)【下肢SEP】PFi-K:N8(膝窩での末梢神経活動電位)、マークはN8o(onset)ICc-GTi:P15(坐骨神経が大坐骨孔を通るときの電位)、マークはP15ピークL1S-ICc:N21(S1仙髄後角で発するシナプス後電位)、マークはN21ピークC2S-Cc:N30(内側毛帯+薄束核の電位):無視していいCz’-Cc:P38(皮質成分)、マークはP38ピーク波形の名前は、N9は上むきの陰性波(Negative)が9ms付近に出現するということであり、Pは下向きの陽性波(Positive)である。【例1】頚椎症:上肢SEPにおいてN9oの潜時は正常、頸髄の病変であることから、N11’oからの潜時が延長する。特にN9o-N11’o、N9o-P13/14o潜時差の延長が見られるのに対し、P13/14o-N21o潜時差は正常になる。N11’は健常者でも綺麗に記録できないことがあり、N9o-P13/14o潜時差の延長を重要視する。【例2】多発性硬化症で大脳に病変あり:上肢SEPにおいてN9o、N11’o、P13/14oの潜時は正常、N20oの潜時は伸びる。N9o-P13/14o潜時差は正常であるが、P13/14o-N20o潜時差が延長する。【例3】CIDP症例:神経根含む末梢神経近位部に強い病巣があるので、下肢SEPではN8oから軽度延長がみられ、N8o-P15潜時差も延長傾向があるが、特にN8o-N21潜時差の著明な延長が見られる。中枢伝導を表すN21-P38潜時差は正常。【例4】腰椎症:下肢SEPにおいて、N8o、N8o-P15潜時差は正常。P15-N21潜時差の延長やN21導出不能の所見となる。