50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ベーシックレクチャー

ベーシックレクチャー14

Sat. Nov 28, 2020 9:45 AM - 10:15 AM 第3会場 (2F B-2)

座長:山崎 博輝(徳島大学病院脳神経内科)

[BL14-1] 神経エコー基礎

塚本浩 (東京医科大学茨城医療センター 脳神経内科)

高周波リニアプローブを用いた神経エコー検査は末梢神経・筋を含む軟部組織の描出に優れ、内部の微細構造やサイズの微小な変化を非侵襲的に評価できる。近年、神経筋疾患における知見が数多く報告され、有用性が証明されている。本レクチャーでは神経エコーの概要の理解を目標とする。神経エコーのおもな利点として以下がある。1)神経筋の形態を非侵襲的に繰り返し評価可能、2)連続的に評価可能、3)ベッドサイドや外来で簡便に評価可能、4)短時間で検査できる、5)動的イメージや任意の長短軸像の描出が容易である。一方、質的診断能力が低いこと、観察範囲が狭いこと、浮腫や脂肪組織の影響で描出が難しいことなどが短所となる。機能検査である電気生理学的検査と相補的に作用するため、併用することで正しい診断を導くための強力なツールとなりうる。 検査装置は高周波リニアプローブのついたエコー装置であれば検査可能である。機器によっては末梢神経エコー用のプリセットが登録されている機種もあるが、多くはプリセットの調整が重要となる。プローブは15-18MHzの高周波プローブが望ましい。通常頸動脈エコーに用いられる9-11MHz帯のプローブでも神経の観察は可能であるが詳細な評価には適さず、特に経験が浅い場合は神経の同定が難しいことが多いため、高周波プローブを用いたほうがよい。検査には末梢神経の走行、分岐する位置、筋・血管・骨との位置関係などの解剖学的知識が必要であるが、神経伝導検査の知識があれば神経の同定は容易い。 神経エコーの異常所見として最も重要なのは断面積(Cross sectional area; CSA)の増大である。典型的にはCSA増大とともに神経内部は黒い低エコー輝度となるが、疾患によっては部分的高エコー輝度や低~高エコー輝度の混在したモザイク状となることもある。手根管症候群や肘部神経障害など圧迫性ニューロパチーでは圧迫部位のやや近位側に神経腫大を認める。慢性炎症性脱髄性多発根神経炎でも病理学的所見と同じく再髄鞘化を反映して末梢神経の腫大を特徴的所見として認めるが、神経内部のエコー輝度は低~高輝度が混在することがある。一方、筋萎縮性側索硬化症(ALS)においては末梢神経・頸部神経根の萎縮を認める傾向にあるが、病期が進行しないと萎縮を認めないことも多い。またALSの診断において針筋電図で線~束性収縮を確認することが非常に重要であるが、舌に代表される安静の取りにくい筋では線維束性収縮の確認が難しいことが多い。エコーは簡便に広範囲の線維束性収縮を画面上で確認できるため、ALSの診断感度を向上させることができる。腓腹神経エコーはとくに神経生検の術前評価として有用である。エコーで生検直前に神経と小伏在静脈との位置関係を確認することで出血リスクを減らし、神経走行の直上に皮切線をマーキングし切開することで神経の同定が容易になり生検時間を短縮することができる。