50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ベーシックレクチャー

ベーシックレクチャー18

Sat. Nov 28, 2020 4:00 PM - 4:30 PM 第3会場 (2F B-2)

座長:酒田 あゆみ(九州大学病院検査部)

[BL18-1] 聴性脳幹反応

湯本真人1,2 (1.群馬パース大学 附属研究所 先端医療科学研究センター, 2.東京大学大学院医学系研究科 病態診断医学講座)

 聴性脳幹反応(auditory brainstem response; ABR または brainstem auditory evoked potential; BAEP)は,音刺激によって誘発され頭皮上で記録される一連の聴覚誘発電位のうち短潜時の反応で,5-6 msに陽性頂点を持つ緩徐成分(slow ABR)と,これに重畳する5-7波の速波成分(fast ABR)からなる.健常者ではいずれの速波成分も陽性頂点潜時は10 ms以内で,主に蝸牛神経および脳幹部の聴覚路に起源を有する.ABRは正しい手続きで施行する限り,覚醒度や意識レベルに依存せず良好な再現性で記録できるため,他覚的聴力検査や蝸牛神経・脳幹機能評価などに臨床応用されている.
 刺激としては,矩形波により駆動され広帯域周波数成分からなるclick音がルーチン検査ではよく用いられてきたが,近年は,蝸牛遅延を相殺する群遅延を施し同期性を高めたchirp音が自動ABR検査機器に取り入れられ,新生児聴覚スクリーニング検査の所要時間の短縮に貢献している.当院では,これまでハイリスクの新生児にしか施行して来なかった病棟での聴覚スクリーニング検査を,2018年6月から全例施行に切り替えており,これに伴って検査室におけるABR検査には,スクリーニング検査で”refer”(要再検)判定となった症例の精査の役割も付加され,より高精度なABR閾値検査が要求されてきている.
 このベーシックレクチャーでは,最近のABR検査を取り巻く状況を踏まえつつ,刺激音(click, chirp),位相(rarefaction, condensation),刺激強度・頻度,単耳・両耳刺激,交叉聴取とマスキング,記録電極,モンタージュ,フィルタ,加算回数といった,記録法に関する基本事項を復習した上で,典型的な症例を供覧しABR検査の基本を概説する.