50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ベーシックレクチャー

ベーシックレクチャー18

Sat. Nov 28, 2020 4:30 PM - 5:00 PM 第3会場 (2F B-2)

座長:湯本 真人(群馬パース大学 附属研究所 先端医療科学研究センター/東京大学大学院医学系研究科 病態診断医学講座)

[BL18-2] 脳死判定の脳波検査

酒田あゆみ (九州大学病院 検査部)

法的脳死判定の脳波検査では脳波活動の有無を評価するために、法に則った厳密な精度での記録が求められる。自施設の脳波計の性能や記録する部屋の環境などを把握した上で、アーチファクト対策を施し、要求される条件での記録を担保しなければならない。
脳死下での臓器移植は1997年に施行された「臓器の移植に関する法律」により始まり、その2年後に厚生省(当時)より「法的脳死判定マニュアル」が臓器提供施設に配布された。さらに2009年に「臓器の移植に関する法律」改正され2010年に施行されたことで、各施設のマニュアル整備やシミュレーションなどが行われるようになった。しかしながら法改正から10年が経過した今もなお法的脳死判定における脳波検査に不安を抱えている検査技師が多い状況に変わりはない。基本的な脳波検査に対する技術習得の機会が必要だが、臓器提供施設でも脳波専属の検査技師は少なく、他検査の合間に脳波検査を担当する立場の技師が多いのが実情である。検査そのものは日常検査の延長線上にあるが、より高い技術による、高い精度を求められるので日頃からのトレーニングが不可欠である。特に皮膚-電極間の接触抵抗軽減、記録条件の理解、アーチファクトの判別と対処は重要である。
ここでは法的脳死判定を軸としつつ、臨床的に脳死状態と考えられる高度脳機能障害患者の脳波検査において押さえておくべきポイントを説明する。
1)脳死判定の流れを把握、2)検査に必要な条件を網羅したマニュアル作成、3)判定が行われる部屋の環境調査、4)周囲への配慮(スタッフ間連携、ご家族の同席)などが大切なポイントとなるが、中でも脳死判定用に備品の準備、手順などそれさえ見れば突然の検査にも漏れなく対応できるというマニュアル兼チェック表を作成しておくことを是非ともお勧めしたい。当院ではかつて不定期開催であった院内シミュレーションを2017年より毎年開催とし、検査室でも脳波検査に特化して半年に1回行うことで、マニュアルの改訂、スキルの維持を行うようにしている。
脳死判定の現場では脳死判定委員のほか医療スタッフ、ご家族など多数に囲まれた中で検査をする場合があり、日常検査よりも緊張感が高まるが、冷静且つマニュアルに沿った手順を確実に踏んだ検査が遂行されなければならない。また、検査技師にとって一検査であっても、ご家族にとっては看取りの時間でもあり、配慮ある行動を忘れてはならない。