50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ベーシックレクチャー

ベーシックレクチャー3

Thu. Nov 26, 2020 10:40 AM - 11:10 AM 第3会場 (2F B-2)

座長:畑中 裕己(帝京大学脳神経内科・神経筋電気診断センター)

[BL3-1] NCSの基礎:軸索障害と脱髄

三澤園子 (千葉大学大学院医学研究院脳神経内科学)

神経伝導検査(nerve conduction study:NCS)を実施する目的は、診断をつける、重症度を評価する、経過を観察するの大きく3つにわけることができる。初心者にとって、エキスパートにとっても時に、NCSによる正確な診断は難しい。診断をする過程で必要な要素は病態と病変分布の評価である。末梢神経疾患の病態は軸索変性と脱髄の2つに大別される。以上の前提に基づき、多発ニューロパチーの診断において、軸索変性と脱髄、その分布をどのように評価するか、わかりやすく実践的に解説する。初めに、多発ニューロパチーのNCS診断において、最も重要なことは、検査を行う前に、所見を予測し、検査項目のプランを立案するよう努めることである。なぜなら、仮説なしに検査を行うことにより、正常か異常か、脱髄域かそうでないか、判断を迷うことが生じうるからである。神経伝導検査のパラメーターはいずれも、正常値の範囲が広い。そのため、実際には大きく低下していても、異常の程度が見かけ上小さく評価される可能性がある。また、比較的早い段階で評価した場合、測定値が正常域に留まる可能性もある。従って、一つ一つのパラメーターが正常か異常かを判定するより、パラメーター全体の変化が、仮説に合致しているかを確認する。軸索変性に伴う主な所見は、活動電位振幅の低下である。また太い線維の脱落に伴い、伝導速度も低下しうる。また疾患により、遠位から生じるdying back変性を来すものと、近位部の障害により遠位端の変性が生じるWaller変性を来すものがある。上記を踏まえると、病歴と臨床症状の分布から診断が推測され、所見も予想しうる。例えば、ボルテゾミブによる化学療法誘発性ニューロパチーであれば、長さ依存性の感覚優位、小径優位の軸索変性所見を予測して検査に臨み、実際の測定結果と合致しているかを確かめる。脱髄に伴う主な所見は、伝導速度遅延、異常な時間的分散、伝導ブロックである。脱髄性ニューロパチーは、先天性と後天性に大別すると理解しやすい。脱髄は先天性疾患ではびまん性かつ均一に、後天性疾患では多巣性に分布するのが原則である。先天性の代表疾患はCharcot-Marie-tooth病1型であり、後天性の代表疾患は慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーである。後天性疾患では炎症がプライマリーに生じる部位に強い脱髄を認める。