日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

ベーシックレクチャー

ベーシックレクチャー9

2020年11月27日(金) 13:45 〜 14:15 第2会場 (2F B-1)

座長:寺田 清人(てんかんと発達の横浜みのる神経クリニック/NHO静岡てんかん・神経医療センター)

[BL9-2] 成人・高齢者の正常覚醒脳波:賦活の意義

木下真幸子 (国立病院機構 宇多野病院 脳神経内科)

成人の正常覚醒脳波は主に後頭部優位律動・速波で構成され、左右差(振幅20%以上、周波数10%以上)がなく、異常波は出現しない。後頭部優位律動(α波=正常ではα帯域)は開眼、知覚刺激、精神活動などに反応して減衰する。α帯域の活動は1歳頃から出現し8歳には優位となる。若年者後頭徐波は25歳まで出現。高齢者では低振幅化し、αバリアントが混入する。速波(β波)は覚醒開眼状態で前頭部優位に出現する。局所性に減少し持続性徐波を伴う場合は皮質を含む局在性の器質性病変を示唆する。過剰β(振幅50μV以上)・局所性の増高は薬物(バルビツール・ベンゾジアゼピン系など)、骨欠損、皮質形成異常と関連する。開閉眼賦活では閉眼時に後頭部優位律動のorganization、開眼時に抑制を確認する。開眼により出現した場合には逆説的αブロッキング(傾眠状態、睡眠障害)を考える。中心頭頂部のα活動が残る場合、開眼したまま手を握らせμ波か異常波かを鑑別する。Mental activation(簡単な計算など)は十分覚醒した状態での脳波を評価するために行う。後頭部優位律動の周波数、徐波がある場合には抑制されるか、等を確認する。会話中は舌運動(Glosskinetic potential)や筋電図のアーチファクトが混入するため注意する。光刺激時の光駆動(photic driving)は通常両側後頭部に出現し、刺激周波数の倍数で、刺激停止後は持続しない。光ミオクローヌス反応(photomyoclonic response, photomyogenic response)は筋原性である。光突発反応(photoparoxysmal response: PPR)は光誘発性のてんかん発作・光過敏を示唆する。PPR4型(全般性棘徐波複合)・発作時脳波パターン(局所性も含む)が出現した場合にはテストワードを与え、刺激を中止し(記録は止めず極力ビデオを保存する)、意識状態・記憶・自覚症状を評価する。過呼吸賦活では脳波の徐波化と振幅の増大(build up)が生じる。賦活終了後30秒以内に回復しない場合は異常。局所性の場合は局所異常を示唆する。Re-build upはmoyamoya病に特徴的だが、診断が確定している場合には賦活は禁忌である。高齢者では原則施行しない。