50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム1 GBS/CIDPにおける生物学・免疫学と電気生理学の接点 (日本神経治療学会・日本神経学会)

Thu. Nov 26, 2020 8:10 AM - 9:40 AM 第5会場 (1F C-2)

座長:桑原 聡(千葉大学医学部 脳神経内科)、小池 春樹(名古屋大学医学系研究科 神経内科学)

[CSP1-1] 脱髄性ニューロパチーの生物学的背景

馬場広子 (東京薬科大学 薬学部 機能形態学教室)

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: CIDP)では、病態に対する液性あるいは細胞性免疫機序の関与が考えられている。CIDPにおける免疫系のターゲットとされるミエリンは、軸索周囲にシュワン細胞が形成する重層した膜様構造物で、有髄神経軸索はミエリンによってランビエ絞輪、隣接するパラノード、ジャクスタパラノード、インターノードの4つの機能的に異なるドメインに分けられる。軸索の活動電位発生に関わる電位依存性Na+チャネルはランビエ絞輪に、電位依存性K+チャネルはジャクスタパラノードにそれぞれ局在し、パラノードには軸索とミエリンの間にパラノーダルジャンクションが形成され、チャネル等の膜分子の側方移動を妨げている。これらの構造には軸索側およびミエリン側にそれぞれ存在する細胞接着因子同士の結合およびチャネルや接着因子を細胞内で結びつけるアダプター分子が重要である。パラノードでは、ミエリン側のneurofascin 155(NF155)と、軸索側のcontactin-1およびcontactin-associated protein(Caspr)-1の複合体が結合している。また、ランビエ絞輪部では、軸索側にneurofascin 186(NF186)およびneuronal cell adhesion molecule(NrCAM)があり、シュワン細胞で産生されるgliomedinと結合してこの部位の構造および機能を保つ。一方、末梢ミエリンを形成する主要タンパク質としてはmyelin protein zero(MPZ or P0)、peripheral myelin protein 22(PMP22)、myelin basic protein(MBP)があり、いずれもミエリン特異的に発現する。特にP0およびPMP22は、オリゴデンドロサイトが形成する中枢ミエリンにはなく、末梢ミエリン特異的に存在する。CIDP患者血清では、これまでにNF155やcontactin-1などの特徴的な分子に対する抗体が見出され、その病的意義や診断的価値が報告されている。我々は、さらに、20-30%のCIDP患者血清と反応する分子量約36 kDaの末梢神経特異的分子が、MPZのC末端に63アミノ酸付加されたサブタイプであることを示し、large myelin protein zero(L-MPZ)と名付けた(Yamaguchi et al, 2012)。本シンポジウムでは、末梢神経における有髄神経の構造および構成分子に関して概説し、CIDPの病態との関連性を考察する。