[CSP1-3] 血液神経関門と脱髄分布
ギラン・バレー症候群(GBS)や慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)は、代表的な免疫介在性ニューロパチーである。GBS、CIDP共に、液性免疫機序と細胞性免疫機序の両者が発症に関与していると考えられている。これらの疾患は、臨床症状や電気生理学的所見によりいくつかのサブタイプに別けられ、それぞれで背景病態が異なることが想定されている。GBSは、電気生理学的に急性運動性軸索型ニューロパチー(AMAN)と急性炎症性脱髄性ポリニューロパチー(AIDP)に大別される。AIDPの病態機序は完全には解明されていないが、AMANでは抗ガングリオシド抗体の関与が証明されている。GBSの神経伝導検査では、遠位潜時延長、伝導速度低下、F波延長や消失、伝導ブロック、時間的分散の拡大、A波の出現、刺激閾値の増大、Abnormal median normal sural(AMNS)pattern等が認められる。これらの所見は、末梢神経遠位部や近位部、生理的絞扼部位に好発することが知られている。CIDPは欧州神経学連合・国際末梢神経学会(EFNS/PNS)のガイドラインで、臨床的症状により典型的あるいは非典型的CIDPに大別される。非典型的CIDPは更に、多巣性脱髄性感覚運動型(MADSAM)、遠位優位型(DADS)、純粋運動型、純粋感覚型、限局型に別けられる。CIDPの神経伝導検査でもGBSと同様に、遠位潜時延長、伝導速度低下、F波延長や消失、伝導ブロック、時間的分散の拡大、A波の出現、刺激閾値の増大、AMNS pattern等が認められる。しかし、典型的CIDPやDADSでは末梢神経遠位部や近位部にこれらの所見が目立つ一方、MADSAMでは末梢神経中間部に伝導ブロックをより多く認める。MR neurographyを用いた研究では、典型的CIDPでは神経根部優位の左右対称な神経肥厚を認める一方、MADSAMでは多巣性の紡錘状の神経肥厚を神経幹部に高頻度に認めることが報告されている。血液神経関門(BNB)は、血液と末梢神経幹の間にあるバリアシステムである。BNBの存在により、有害物質や病的リンパ球が末梢神経内へ流入してくるのを阻止している。末梢神経の近位端と遠位端、生理的絞扼部位、神経節は、BNBが脆弱あるいは存在しないと考えられている。上記の病変部位は、BNBの脆弱部位と驚くほど一致している。本講演では、BNBの観点から考えられる、GBS/CIDPの背景病態について考察する。