[CSP11-4] PSGから見える神経変性疾患と筋原性疾患
我が国では、65歳以上の人口が全人口に対して21%を超え「超高齢社会」にすでに突入しており、今後、慢性期在宅呼吸管理の重要性がより一層増してくると思われる。慢性期在宅呼吸管理は多職種の医療者が関わりながら行われなければならない。多職種のなかで、医師は対象疾患の病態を呼吸生理学的側面から深く理解したうえで適切な呼吸管理の方針を決定しなければならない。すなわち呼吸器内科医の役割は大きいと考える。しかしながら、我が国の現状は必ずしもそうではなく、慢性期呼吸管理を必要する疾患を診療している各診療科の医師が治療方針の決定を行っていることが多いと思われる。くわえて、慢性期呼吸管理は昼夜にわたる呼吸管理であり、呼吸動態が覚醒時とは大きく変化する睡眠中の呼吸管理の重要性への認識はまだまだ薄いと言わざるを得ない。睡眠中の在宅呼吸管理の代表格は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)であるが、そのOSAですら、治療は時に難しく、呼吸生理学的な側面からの病態把握が必要になることが少なくない。また、OSAのみならず、さまざまな疾患に伴う睡眠呼吸障害への関心も高まってきており、脳神経内科、循環器内科、小児科、耳鼻咽喉科などからの紹介患者が増えている。今回のシンポジウムでは、脳神経内科疾患のなかでも神経変性疾患および筋原性疾患にフォーカスを当てて、それら疾患に対する睡眠中の呼吸管理療法を導入するにあたり、PSGの重要性、そしてPSGから見えてくるそれぞれの疾患の病態をどのように評価していけばよいかを紹介したいと考えている。具体的には、睡眠呼吸障害の重症度指標である無呼吸低呼吸指数(AHI)では表すことができない睡眠呼吸障害の特性、そしてその特性を裏付ける呼吸生理学的な知見を概説したい。このセッションの終わりにあたり、PSG波形をしっかりと自ら見ること、そしてその波形特性がどのような病態生理学から生じているのかを考えることの重要性を理解し、その理解が脳神経内科疾患の呼吸管理の成否に影響することを感じてもらえれば幸いである。