[CSP13-2] 重症筋無力症と自己抗体
重症筋無力症(myasthenia gravis, MG)は神経・筋接合部の抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体あるいは筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)に対する自己抗体が原因となる臓器特異的な自己免疫疾患である.抗AChR抗体はMGに特異的な自己抗体でありradioimmunoassayにより測定される.正常は0.2 nM以下であり抗体価は,MGの重症度や病勢と必ずしも一致しない.MG全体の80%から82%で陽性となる.病態機序として,遊離したアセチルコリンの受容体への結合阻害などが推定されているが,補体介在性のAChR崩壊促進が重要と考えられている.抗MuSK抗体は抗AChR抗体が陰性の全身型MGで検出され,MG全体の3%から5%程度で陽性となる.抗MuSK抗体も病因的自己抗体と考えられ,抗MuSK抗体陽性例では顔面筋,球症状を伴いやすく,クリーゼを呈する重症例が含まれる.第3の自己抗体として発見されたLDL receptor-related protein 4に対する自己抗体については,その臨床的意義はさらなる検証が必要であり,ガイドラインにおいても病因論的自己抗体には位置づけられていない.抗横紋筋抗体は横紋筋を構成する蛋白に対する自己抗体であり,対応抗原としてtitin,リアノジン受容体,電位依存性Kチャネル(Kv1.4)が代表的な抗原である.基本的には抗AChR抗体陽性のMG患者で検出されるため,MGの診断という点では有用性に乏しい.しかし特定の病型や合併症,予後との関連が報告されており,その臨床的意義が注目されている.胸腺腫関連MGで高頻度に検出され,特に球症状やクリーゼを呈する症例が多い.また経過中に心臓に関連した合併症(心筋炎)との関連があり,生命予後を左右する合併症の早期発見は極めて重要である.近年,新たな測定法であるcytometric cell-based assayにより抗横紋筋抗体が可能となった.また免疫関連有害事象であるMGあるいは筋炎では70%程度で陽性であり,診断のバイオマーカーとなることが期待される.