50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム13 重症筋無力症診療ガイドライン update (日本神経学会)

Fri. Nov 27, 2020 1:15 PM - 2:45 PM 第5会場 (1F C-2)

座長:今井 富裕(札幌医科大学 保健医療学部)、園生 雅弘(帝京大学 脳神経内科)

[CSP13-4] 重症筋無力症ガイドライン 胸腺摘出について

奥村明之進 (大阪刀根山医療センター 呼吸器外科)

重症筋無力症(MG)に対する胸腺摘出術は、1913年,SauerbruchのMG患者に対する胸腺摘出術の報告、1939年のBlalockによる胸腺腫瘍合併MGに対する腫瘍摘出に始まる一連の胸腺摘出の有効性の報告、その後の複数の外科医の臨床経験によって確立されてきた。25年間の自験例で、胸腺腫を合併しないMGに対する拡大胸腺摘出術を施行された140例中113例(81%)で症状の消失あるいは改善が得られた。しかしながら、MGに対する胸腺摘出の有効性はエビデンスに基づく臨床成績とは判断しがたく、さらに近年の免疫療法の普及により胸腺摘出術の有効性が乏しくなってきている可能性などにより、特に胸腺腫を合併しないMG に対する胸腺摘出術の意義について疑問が呈されてきた。実際、日本神経学会による「重症筋無力症診療ガイドライン2014」では、成人期発症 MG に対する治療の基本的考え方として免疫療法が治療の中心とされ、早期から積極的に免疫療法を行うことが推奨されており、胸腺摘出術はEarly-onset MG の一部の若い発症、病初期のアセチルコリン受容体抗体陽性の過形成胸腺の症例に限定されている(グレードC1)。2014年以降の大きなイベントは、Wolfe G. I. らによって施行されたMGTX 臨床試験の結果、randomized trial により胸腺摘出が QMG score を有意に低下させ、ステロイドの必要量を有意に減量できたというの報告である(N Engl J Med. 2016; 375(6): 511~522)。現在、日本神経学会による重症筋無力症診療ガイドラインの改定作業が行われており、” 非胸腺腫MGに対する胸腺摘除はどのような患者で行われるか” という Clinical question に対して、(1)胸腺摘除の有効性が期待でき,その施行が検討される非胸腺腫MGは,50歳未満の発症で,発病早期のAChR抗体陽性過形成胸腺例である(グレードB)、(2)50歳以上発症の非胸腺腫MGに対しては,胸腺摘除がfirst-line治療ではないことを理解したうえで,慎重にその適応を判断する(グレードC1)、が推奨され、(1)においてグレードが向上した。胸腺摘除の周術期には術後のクリーゼの可能性があり、リスク要因を明らかにすることが求められる。改定中の診療ガイドラインでは、胸腺摘出術後クリーゼのリスクファクターとして、術前の球麻痺症状、重症度が高いこと、術前クリーゼの既往、肺活量低下があげられ、クリーゼのリスクを軽減するために術前のMG総情のコントロールが推奨されることになった。また、近年、外科領域では胸腔鏡手術が進歩しており、胸腔鏡による胸腺摘出術が従来の胸骨正中切開と同等の効果があるというメタアナリシスの報告も言及されることになった。