関連学会合同シンポジウム14　整形外科領域における神経・関節のエコー　（日本MIST学会）

[CSP14-2] 整形外科領域における末梢神経超音波診療の革新

^○仲西康顕 (奈良県立医科大学　整形外科・臨床研修センター)

　整形外科領域における超音波診断装置の利用には，近年めざましい進歩がある．従来は困難であった，末梢神経をはじめとする運動器の病態を動態での評価を交えてその場で観察できる利点は非常に大きい．診断だけではなく，治療，麻酔，手術，術後のリハビリに至るまで幅広く利用されている．また，ポータブルの超音波診断装置の画質も向上し，外来診察室だけではなく，病室や手術室，あるいは院外に至るまで活躍の幅を広げている．特に末梢神経や，関節などの運動器に対する超音波診断装置の利用方法は枚挙にいとまがないほどである．
　末梢神経は，特に手の外科領域でよく観察する対象であり，超音波を利用した治療の対象となっている．末梢神経の形態以上の観察としては，外傷による損傷や偽神経腫の形成，絞扼性神経障害，骨幹神経麻痺における砂時計状の神経束のくびれ形状などが報告され，診断の補助として有意義であることが多い．
　また，超音波ガイド下の末梢神経ブロックは，運動器の疼痛の治療として有効であるだけでなく，四肢の手術における麻酔方法の新たな選択肢となっている．従来の触診や電気刺激による末梢神経ブロックよりもはるかに正確性に優れるため，狙った末梢神経だけを正確にブロックすることにより，術中の患者による自動運動を評価しながら機能を再建する選択的知覚神経ブロックなどの新しい手技が誕生している．術後のリハビリテーションにおいて，超音波ガイド下での末梢神経カテーテル挿入は，術後疼痛を効果的に抑制することが可能である．さらに手術においても，我々は専用の手術器具を開発し，神経損傷を避けながら最小の侵襲で行う超音波ガイド下手術を数多く行っている．
　今回，整形外科領域における末梢神経や関節の診療における近年の進歩の一端について，我々の経験と取り組みについて述べる．