日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム14 整形外科領域における神経・関節のエコー (日本MIST学会)

2020年11月27日(金) 13:15 〜 14:45 第6会場 (2F I)

座長:星野 雅洋(苑田第三病院)、佐藤 公治(名古屋第二赤十字病院)

[CSP14-5] 脊椎術後疼痛に対するエコー下インターベンション

岩崎博, 山田宏 (和歌山県立医科大学 医学部 整形外科学講座)

近年、低侵襲脊椎手術機器および手技の発展により各種脊椎固定術の汎用性が高まっている。大変優れた術式であり神経症状の回復も良好であるが、術後に頚肩腕部や腰殿部の疼痛が持続する症例や隣接障害のために経過のなかで新たな神経症状や疼痛が出現することを経験する。脊椎専門医であるにもかかわらず、脊椎固定術後に持続する疼痛に対して、切開しているから仕方がない、低侵襲脊椎手術で遺残する疼痛は仕方がない、上下肢への神経症状が改善しているから問題ない、と患者の訴えに真摯に向き合わず、鎮痛剤や外用剤あるいは盲目的局所注射などで対応していた。しかしながら、2017年に運動器エコーを用いた診療を知り、自分でも取り組み始めて以来、これまでは痛みの発生源の探索を怠っていたことに気づかされた。
手術時の展開などに由来すると考えられる疼痛の多くは、脊髄神経後枝が関連している。脊椎外科医として、疼痛やしびれの部位・下肢各筋の筋力・感覚障害部位・腱反射・歩行負荷による症状出現部位などを詳細に確認し、責任高位診断を正確に行うことに精力を費やしてきたが、これらはすべて“前枝”の所見であり、“後枝”のチェックは含まれていない。エコーを活用し、脊髄神経前枝と後枝を意識した治療を行いはじめたことで脊椎手術術後疼痛への苦手意識がすこし解消され始めたため、その活用法を実際の症例とともに紹介する。
また固定術後の隣接部障害として、椎間関節・椎間板・神経根・脊髄神経以外にも、広範囲脊椎固定術が施行されることが多くなった近年では、仙腸関節や股関節障害に由来する疼痛にも注意をはらう必要がある。仙腸関節障害はFailed back surgery syndrome(FBSS)の原因としても報告されており、腰椎固定術後の仙腸関節性疼痛を検討した鵜木らの報告において、仙椎まで固定した場合および固定椎間数が多いほど発症率が有意に高いとされている。このように、各種矯正固定術が多く施行されるようになった現代において、脊椎固定の隣接部障害として仙腸関節障害は忘れてはならない病態である。しかしながら画像診断が困難であることが大きな問題となり確定診断や治療が行われていないという現状がある。また、脊柱矯正固定術後に変形性股関節症が出現する症例があることも判明してきており、これも一種の脊椎固定術後隣接部障害と考えられる。一方超音波装置は、その機器発展により各種運動器疾患の診断・治療に導入されるようになってきた。外来で簡便に施行できる超音波ガイド下インターベンションは、これら脊椎固定術後疼痛に対する診断ならびに治療として低侵襲で有用な手法であると考えるようになってきたため、その実際を紹介する。