[CSP15-1] 脳神経領域における血管エコーと神経筋エコーの関係
【はじめに】血管エコーは全身の血管を無侵襲に評価できる有用な検査法である.かつては血管造影がgold standardであったが,現在ではより低侵襲,無侵襲な検査法であるCT,MRI,MRAに加えて,エコー検査が重要な役割を担っている.さらに近年では,装置の性能向上,超高周波プローブの出現により神経・筋に対するエコー検査も脚光を浴びるようになった.両者の相似点としては,全身を評価すること,部位によりプローブの持ち替えが必要なこと,他のモダリティとの組み合わせでより詳細な評価が可能なことなどが挙げられる.今回,主に脳神経領域における血管エコーおよび神経筋エコーの役割と可能性について解説する.1.血管エコー:血管エコーは,全身の動脈および静脈の評価を行う.動脈については,頭蓋内外動脈,大動脈,四肢動脈,腎動脈などの評価を行うが,主に狭窄や閉塞の有無,プラーク性状,動脈瘤,動脈解離,血管炎などの評価が中心となる.例えば脳梗塞の精査として頸動脈エコーを用いる場合は,狭窄・閉塞の有無,プラーク性状を評価することで,脳梗塞のリスクと適切な治療方針を検討することができる.最近では高周波プローブや低流速血流を評価できることになったことにより,詳細な末梢動脈の評価が可能になった.静脈については,深部静脈血栓(DVT)の観察,静脈瘤の評価,レーザー焼灼術などにもエコーが利用されている.2.神経・筋エコー:神経・筋エコーは, 最近急速に普及しつつある領域である.超音波装置の性能向上に伴い,より微細な構造物の観察が可能となり,末梢神経疾患や筋疾患をターゲットとしたエコー検査が注目されるようになってきた.末梢神経エコーでは主に頸部神経根と四肢の末梢神経を評価する.高周波リニア型プローブを使用し,観察部位によって使い分ける.評価としては神経の腫大・萎縮の有無とその程度,腫瘤性病変の有無などを観察する.3.血管エコーを知り神経・筋エコーを理解する:両者とも全身を診るという点で解剖(走行)を把握しておく必要がある.その際,血管と神経は伴走しているところに注目する.例えば,総頸動脈には迷走神経が,尺骨動脈には尺骨神経が,小伏在静脈には腓腹神経が伴走する.これらを知っているだけで同定が容易になる.また,ボツリヌス注射の際に血管を同定することや,血管内治療の際に末梢神経を同定することで,起こりうる合併症を回避することができる.さらには,手根管症候群術後の神経内血流観察や,腓腹神経生検時の静脈の確認,肘部における血管と神経の位置関係把握など,様々な点で関係性がある.【おわりに】血管エコー・神経筋エコーを駆使することで様々な病態が把握できるようになった.どちらからでもよいので日常臨床の現場で使用できるよう興味をもってもらいたい.