[CSP17-4] 身体特異性注意の変容様式からみた運動機能障害者における超適応メカニズム
脳は自己身体に対して潜在的に注意を向け、身体の情報を更新し、その情報を利用して正しい運動を実行している。このように、身体の情報を得る際に用いられる自己身体に向ける注意を身体特異性注意という(Aizu 2018)。ヒトではこの機能の存在が確認されているが、障害を呈した患者においてどのように変化しているのか不明な点が多い。リハビリテーションでは、運動機能障害を改善するだけではなく運動機能障害を有した状態においても日常生活における動作の獲得を目指す。このような運動機能障害を有した状態では、この身体特異性注意という機能がどのように変容し動作獲得のために適応しているのだろうか。身体特異性注意は心理物理学的手法である反応時間課題によって客観的、定量的に測定できることが示されている(Reed 2006)。この手法を用いて運動機能障害を有した患者において測定し、その変容を確かめ、行動変容のメカニズムを考察した。
始めに、慢性期片麻痺者(基底核病変)を対象に運動麻痺を呈した麻痺手の身体特異性注意を測定した(Aizu 2018)。結果、慢性期片麻痺者の麻痺手では健常者の手の身体特異性注意量よりも低下していた。さらに、麻痺手の身体特異性注意は麻痺手の運動機能と発症後期間との間に相関を認め、運動機能が重度で、発症後期間が長い患者ほど、より麻痺手の身体特異性注意が低下していた。発症後期間と関係したことから、脳損傷から直接生じるものではなく、二次的に生じていることが示唆された。このように、動かしにくい身体に対して脳は自己身体を無視していくかのような反応を示していくことが考えられた。
次に、義足歩行を獲得する目的の下肢切断者を対象に、反応時間課題を用いて義足に向ける注意と残存する健常足に向ける注意を義足歩行能力の変化によって縦断的に測定した。失った身体の代替として用いる義肢では身体化が生じることが多くの研究で示されているため、義足においても自己身体と同様に注意が向けられるだろうと仮説し実施した。結果は切断者の義足歩行初期では、残存する健常足よりも義足に向ける注意が低かった。一方、義足歩行習熟期では初期よりも義足に向ける注意が増加し、習熟期では義足と健常足に向ける注意に差を認めなくなった。義足の身体化を質問紙にて聴取したところ、義足歩行初期よりも義足歩行習熟期で義足の身体化が生じている結果を得た。さらに、初期よりも習熟期で最大歩行速度は速くなった。これらのことは、義足歩行リハビリテーションによって、自己身体と同様に義足に対して注意が向けられるようになり、運動に役立つ情報を脳が得ようとする適応的な義足の運動制御メカニズムが明らかとなった。
始めに、慢性期片麻痺者(基底核病変)を対象に運動麻痺を呈した麻痺手の身体特異性注意を測定した(Aizu 2018)。結果、慢性期片麻痺者の麻痺手では健常者の手の身体特異性注意量よりも低下していた。さらに、麻痺手の身体特異性注意は麻痺手の運動機能と発症後期間との間に相関を認め、運動機能が重度で、発症後期間が長い患者ほど、より麻痺手の身体特異性注意が低下していた。発症後期間と関係したことから、脳損傷から直接生じるものではなく、二次的に生じていることが示唆された。このように、動かしにくい身体に対して脳は自己身体を無視していくかのような反応を示していくことが考えられた。
次に、義足歩行を獲得する目的の下肢切断者を対象に、反応時間課題を用いて義足に向ける注意と残存する健常足に向ける注意を義足歩行能力の変化によって縦断的に測定した。失った身体の代替として用いる義肢では身体化が生じることが多くの研究で示されているため、義足においても自己身体と同様に注意が向けられるだろうと仮説し実施した。結果は切断者の義足歩行初期では、残存する健常足よりも義足に向ける注意が低かった。一方、義足歩行習熟期では初期よりも義足に向ける注意が増加し、習熟期では義足と健常足に向ける注意に差を認めなくなった。義足の身体化を質問紙にて聴取したところ、義足歩行初期よりも義足歩行習熟期で義足の身体化が生じている結果を得た。さらに、初期よりも習熟期で最大歩行速度は速くなった。これらのことは、義足歩行リハビリテーションによって、自己身体と同様に義足に対して注意が向けられるようになり、運動に役立つ情報を脳が得ようとする適応的な義足の運動制御メカニズムが明らかとなった。