50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム2 神経生理学的アプローチによる心理学研究 (日本生理心理学会)

Thu. Nov 26, 2020 8:10 AM - 9:40 AM 第8会場 (2F K)

座長:勝二 博亮(茨城大学教育学部)、軍司 敦子(横浜国立大学教育学部)

[CSP2-4] 視知覚を支える自動的予測:視覚ミスマッチ陰性電位研究を中心に

木村元洋 (国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

視覚系がある時刻(t1)にある知覚を生み出した場合、その知覚がその時刻(t1)の現実の世界を正確に表していると都合がよい。しかし実際には、網膜が光を受け、それが視知覚に転換されるまでに約0.1秒の時間が必要となる。そのため、もし視覚系が網膜上の情報に基づき知覚を生み出しているとすると、ある時刻(t1)における知覚は、その時刻(t1)の現実の世界ではなく、0.1秒ほど過去の世界を表すことになる。このような現実の世界と知覚のギャップを補い、現在の世界を正しく知覚するために、脳は未来を見ようとしていると考えられる。本報告では、(1)事象関連脳電位(event-related brain potential: ERP)成分、特に視覚ミスマッチ陰性電位(visual mismatch negativity: VMMN)とよばれる、視覚オブジェクトがそれまでの変化パターンから逸脱した挙動を示したときに自動的に出現するERP成分と、(2)表象的慣性(representational momentum: RM)とよばれる、視覚オブジェクトの消失位置がそれまでの変化パターンに沿って前方にズレて判断される知覚バイアス現象の関係を扱った研究を主に紹介し、私たちの知覚がこのような予測によって自動的に支えられていることを示すとともに、予測の神経基盤や予測の認知的特性について論じる。