日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム20 痛みの客観的な評価と臨床活用への挑戦 (日本運動器疼痛学会)

2020年11月27日(金) 16:45 〜 18:15 第7会場 (2F J)

座長:牛田 享宏(愛知医科大学 学際的痛みセンター/運動教育センター)、鈴木 俊明(関西医療大学大学院 保健医療学研究科)

[CSP20-4] Patient Reported Outcomeを用いた痛みの客観的な評価と臨床活用の可能性

山本将揮1,2, 鈴木俊明2, 中塚映政1 (1.なかつか整形外科リハビリクリニック, 2.関西医療大学大学院 保健医療学研究科)

【はじめに】
“痛み”について国際疼痛学会は2020年に「An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage」であると再定義した。また、痛みは常に生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度に影響を受ける個人的な経験であるとしている。そのため、医療従事者が痛みを抱えた患者と向き合う際には、心理社会的な痛みも含めた多面的な評価が求められる。そこで、我々は地域の整形外科クリニックにて患者報告アウトカム(Patient Reported Outcome:PRO)を用いて痛みについて多面的な評価を可能な限り客観的に評価したリハビリテーションを試みている。
そのなかで、我々は慢性腰痛を有する高齢者への臨床場面にて、運動療法や日常生活活動(Activities of Daily Living:ADL)が痛みの自覚的強度や運動への恐怖心により阻害されることを多く経験することに着目した。そこで、慢性腰痛を有する高齢者の運動への恐怖心や痛みの自覚的強度が日常生活活動に及ぼす影響や関係性を検討し、臨床へ示唆を得ることを目的とした研究を行っている。現在行っている研究結果を参考に、PROを用いた痛みの客観的評価と臨床応用について話したい。
【対象と方法】
対象は、慢性腰痛を有する女性20名とした。評価項目は、運動への恐怖回避思考に対する評価するタンパ運動恐怖症スケール(Tampa Scale for Kinesiophobia:TSK)、腰痛による日常生活の障害を評価する腰痛特異的QOL尺度(Roland-Morris Disability Questionnaire:RDQ)、痛みによる日常生活の障害を評価する疼痛関連機能障害尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)、痛みの自覚的強度を評価するための視覚的スケール(Visual Analogue Scale:VAS)である。また、VASは「最も強く感じる痛みの自覚的強度(最大VAS)」・「最も弱く感じる痛みの自覚的強度(最小VAS)」・「平均的な痛みの自覚的強度(平均VAS)」の3種類を聴取した。初回評価を行い、医師の指示に基づいて週に2回程度の頻度で理学療法士による運動療法を1回20分で行い、1ヶ月後に最終評価として効果判定を行った。
【結果】
最大VASに有意な改善を認め、最大VASとTSKにて中等度の効果量を認めた。また、TSKとRDQは負の相関関係、TSKと最小VAS・平均VASは正の相関関係を示した。また、RDQの結果が増悪した対象群とその他の対象群について精査した結果、RDQの移動動作領域の点数に有意な差を認めた。加えて、増悪した対象群では短時間の立位保持が腰痛により制限され、横になって休む時間が増え、更衣動作に時間を要すると回答した対象者が多いことが特徴的であった。
【まとめ】
本研究よりPROを用いた評価は、簡便に用いる事ができ、理学療法士の運動療法や日常生活指導だけでなく、医師との連携にも円滑にすすめることが出来ると考える。