日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム23 脊椎手術における手術支援技術の進歩 (日本CAOS研究会)

2020年11月28日(土) 13:30 〜 15:00 第5会場 (1F C-2)

座長:小谷 善久(関西医科大学総合医療センター整形外科)、金村 徳相(江南厚生病院 脊椎脊髄センター)

[CSP23-1] 術前CTナビゲーションからハイブリッドナビゲーション手術への軌跡

大場悠己, 倉石修吾, 池上章太, 上原将志, 滝沢崇, 宗像諒, 畠中輝枝, 宮岡嘉就, 鎌仲貴之, 高橋淳 (信州大学 整形外科)

当科では1996年に、術前CTナビゲーションシステム(StealthStationTM)を脊椎手術に導入した。ナビゲーション支援手術は正確ではあったが、レジストレーション作業を1椎ずつ行うために時間がかかるという欠点があった。そこで、3椎まとめてレジストレーションを行うmulti-level registration法を考案し、有用性を報告した。
2018年5月に当学部附属病院包括先進医療棟にハイブリッドナビゲーション手術室を導入した。ハイブリッド手術室対応多軸透視・撮影システム“ARTIS pheno”と次世代型自動レジストレーションが可能なナビゲーションシステム“CurveR”を連動させた。ハイブリッドナビゲーション手術室の導入で、ナビゲーションに必須であったレジストレーションが不要となり、後方成分の未成熟な症例などに対しても安全に低侵襲に脊椎矯正手術を提供できるようになった。
ここでは思春期特発性側弯症(AIS)に対するハイブリッドCTナビの椎弓根螺子(PS)逸脱率、逸脱しやすい患者の特徴、そして逸脱しやすい椎弓根の特徴について報告する。
【方法】2018年6月から2019年11月の間にAISに対してハイブリッドCTナビを用いたPS挿入を行った連続した38人を対象とした。男性4例、女性34例。Lenke分類Type1が28例、Type2が2例、Type3が1例、Type5が6例、Type6が1例。手術時平均(±標準偏差)年齢16.2±4.5歳、major curveの平均Cobb角は54.8±10.9°。リファレンスフレーム(RF)は撮影範囲の尾側端に設置した。1回目の撮影での平均PS挿入椎体数は6.0±1.2(4-9)椎体であった。逸脱のGrade(G)はRaoらの分類に沿い決定した。PSが逸脱した患者と逸脱しなかった患者のベースラインパラメータを比較し、逸脱しやすい患者の因子を検索した。さらにPSが逸脱しやすい椎弓根レベルの特徴を検索した。
【結果】全体で挿入された493本のPSのうち、逸脱はG1本(10.4%)、G2が17本(3.2%)、G3が1本(0.2%)であり、メジャーパーフォレーション(G2もしくはG3)は18本(3.4%)であった。G2以上の逸脱が1本以上ある患者は13人(34%)であった。RFからの距離が5椎体まででは逸脱はわずかであったが、距離が6椎体以上になると逸脱率は有意に上昇した(2.2% vs 36.8%, p=0.03)。逸脱を認めた患者は有意に低身長であり全例が女性であった。RFからの距離[+1椎体, Odds ratio: 1.44 P=0.003]がPS逸脱の独立した椎弓根位置の関連因子であった。
【考察】AISに対するハイブリッドCTナビを用いたPSの逸脱率は3.4%だった。RFから6椎体以上離れると逸脱率が有意に上昇していた。低身長の女性患者では特に注意が必要である。