[CSP23-2] 術中モバイルCT(O-arm)と連動した3Dナビゲーションの応用と展望
脊椎外科領域でのサージカルナビゲーションの応用は本邦では2000年前後から始まった。脊柱は術中体位で形状変化が起こるため、術前CT像と術中脊椎とのSegmental Registration操作が必要で手術時間を要した。しかしその精度は極めて高く、小児や高度脊柱変形等の手術を安全に行うことができるようになった。演者は小児頚椎病変や高度脊柱変形にこの技術を応用し、その精度が非使用例に比べて有意に向上することを報告してきた(Kotani Y, et al. J Neurosurg 99, 2003; Spine 22, 2007)。また当時はナビゲーション周辺機器が整っていなかったため、スクリュー刺入器具先端を正確にナビゲーション出来る特殊機器を企業と開発応用し、多くの施設で臨床応用された(Kotani Y, et al. J Neurosurg 99, 2003)。2012年ごろから術中モバイルCTが本邦でも臨床応用可能となり、演者も2013年に導入した。本機器をナビゲーション器機と接続することで、短時間で極めて高精細なCT画像が得られ、かつこの情報を利用したRegistration操作なしのリアルタイムナビゲーションが可能となった。術中モバイルCTを応用した3Dナビゲーションの利点は、1)多椎間のスクリュー刺入が正確に短時間で行える、2)刺入後のCT撮像で確認・修正が可能、3)患者体形に影響されない明瞭な三次元画像をガイドとした手技、4)後方経皮スクリュー刺入が安全確実にガイドワイヤーなしに可能、5)後方スクリュー刺入のみでなく、様々な高難度手術の精度向上や低侵襲手術との融合が可能、などである。演者は頚椎・胸椎後縦靭帯骨化症の前方切除・浮上術やLateral interbody fusion(LIF)を代表とする低侵襲前方手技にこれらを応用してきた。また本邦で初めて行われた腰仙椎部低侵襲前方固定術(OLIF51)の多施設臨床研究にも積極的に応用し、良好な臨床成績を報告してきた(Kotani Y, et al. J Orthop Sci, Sep 12, 2020)。術中モバイルCTは世界の脊椎ナビゲーション手術に革命をもたらしたが、依然放射線被曝や撮像領域の狭さ、手術スペースの制限など多くの問題を有している。Artificial intelligence(AI)を応用した被曝量の低減と、術中脊椎アライメントの三次元的把握を基盤とした術中手術プランニングなどの新しい技術と概念を応用したSpinal Robotics Technologyの今後の発展に期待したい。