日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム23 脊椎手術における手術支援技術の進歩 (日本CAOS研究会)

2020年11月28日(土) 13:30 〜 15:00 第5会場 (1F C-2)

座長:小谷 善久(関西医科大学総合医療センター整形外科)、金村 徳相(江南厚生病院 脊椎脊髄センター)

[CSP23-3] 脊椎手術プランニングにおけるCAOS技術の進歩

金村徳相1, 佐竹宏太郎1, 伊藤研悠1, 田中智史1, 森田圭則1, 鏡味佑志朗1, 大内田隼2, 中島宏彰2, 今釜史郎2 (1.江南厚生病院 脊椎脊髄センター, 2.名古屋大学 整形外科)

 脊椎手術におけるコンピュータ支援整形外科(CAOS)技術の進歩は著しく,特に脊椎ナビゲーション(SN)は術中3Dイメージ画像SNとなり大きく進化した.術中3Dイメージ装置の進化,SN対応器材の拡張やSN一体型手術用ドリルなどにより有用性と簡便性は増し,適応疾患も拡大されてきた.CAOS技術は手術の安全性や低侵襲化,被曝低減化など脊椎手術へのメリットは大きい.
 CAOSは術前プランニングにおいても多くの技術を提供している.全身の正面・側面像を同時に撮影するX線撮影装置であるEOSは放射線量を低減した上,鮮明な画像を得ることができ,疑似3Dモデルも作成することができる.脊椎アライメントパラメーターを荷重下に3D測定算出可能である.ソフトウエアspineEOSでは,脊柱変形手術をシミュレーションすることができ,術前プランニングを3次元的視覚的に理解できる.
 術前プランニングはX線やCTおよびMRI画像にて脊椎骨や神経,血管,内臓などの形態や解剖学的位置を理解し,実際には複数のモダリティーを術者の脳内で重ね合わせてシミュレーションしている.CT・MRI などの画像から高精度な3D 画像を描出し,3次元画像解析するSYNAPSE VINCENT(富士フイルム)では,異なるモダリティの重ねあわせが可能で,複数画像を同一空間に配置して位置合わせを行いマルチ3Dが表示できる.深層学習により脈管系の抽出や腰神経のセグメンテーション等も可能である.MR拡散強調画像をテンソル解析し神経線維経路をトラクトグラフィーにより抽出し,CT画像と合わせて皮膚,骨,脳実質,血管等を3D表示する開頭シミュレータは脊椎手術シミュレータとしても有用である.最近では手術シミュレーションや教育などにMR(複合現実)の有用性が報告されているが,VINCENTではMRのもと画像となるポリゴンモデルを生成しSTL形式出力が可能で,MR技術がより身近なものとなってきた.
 脊椎手術支援ロボットはSNの機能に加えて,多軸性ロボットアームが位置や方向を強固にガイドすることで手術総合精度を高めることが期待されている.脊椎手術支援ロボットにおいてもCAOS技術により術前画像解析や手術シミュレーション・プランニングも可能で,より正確で再現性の高いロボット手術が術者の負担なく行える.
 脊椎疾患治療におけるCAOS技術のベネフィットはかなり大きい.新しい画像装置や解析ソフトウエアによりこれまで以上に病態が視覚的に理解でき,術者脳内の仮想術野も3次元視覚的客観的な表示が可能になってきた.CAOS技術は工学的ロボット技術にも組み込まれ,正確で安全な脊椎手術への寄与が期待される.しかしこれらは脊椎手術支援システムであり,CAOS技術と術者の手術技術を融合することが必要である.