[CSP3-4] 救命救急センターに搬送されるけいれん重積症例の現状と転帰
【はじめに】当施設は都内にある3次救命救急センターであり、様々な基礎疾患や合併症を有する重症症例が搬送される。けいれん性疾患に関しては、けいれん重積発作の搬送が最も多い。その中で、老年人口の急激な増加に伴い,高齢者の搬送が増加している。けいれん重積発作が身体的および精神的に患者に与える影響が大きいものの、適切に診断・治療すれば抗てんかん薬による治療効果がよいことも知られている。高齢者は、基礎疾患の多さ、臓器予備能の低さや家族環境など様々な問題点が入院と同時に存在する。集中治療によるICU-acquired weakness(ICU-AW)やpost-intensive care syndrome(PICS)が問題となっており、高齢者重症患者に対して、移動能力・生活能力を低下させない治療を行うことが重要である。【目的】当施設に搬送されたけいれん重積患者の現状と転帰について、75歳以上を高齢群、75歳未満を非高齢群にわけて、後方視的に検討し、現状と問題点そして、救命救急センター果たすべき役割について考察した。【結果】2011-2020年の間に当施設へけいれん重積で搬送されたのは1008症例であった。男性が66.3%で、高齢群は24.5%であった。原因疾患は脳卒中が31.6%と最も多く、次いで外傷13.1%であった。急性症候性発作であったのは全体の23.4%であり、内訳は脳卒中46.2%、代謝性脳症16.1%、頭部外傷15.7%あった。入院日数は高齢群が11.4日、非高齢群が6.9日と有意(P<0.01)に長かった。GOSでGR、MDと転帰良好であったのは、高齢群で66%、非高齢群で84.6%と有意差(P<0.01)を認めた。全体の死亡率は1.2%であった。また、転医後リハビリにおいて、FIMは、入退院時とも若年者が有意に高値であるが、改善スコアは有意差(p=0.14)がなかった。【まとめ】けいれん後の死亡率は低いものの、けいれん重積自体が原因となるADLの悪化が、約3割の症例に認められ、特に高齢群に顕著であった。早期からリハビリテーションを目的とした転医介入を行うことが重要である。救命救急センター入院期間のみでは、改善しきれない全身状態でも、リハビリにより改善が期待できる症例もあり、年齢問わず回復期リハビリ等への連携が重要であると推察された。