日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム4 ボツリヌス「+α」でもう一段上を目指す (日本ボツリヌス治療学会)

2020年11月26日(木) 10:00 〜 11:30 第8会場 (2F K)

座長:正門 由久(東海大学医学部リハビリテーション科)、有村 公良(大勝病院)

[CSP4-1] 超音波ガイド下で正確に注射する

古川俊明 (東海大学医学部付属八王子病院)

ボツリヌス療法においてボツリヌス毒素製剤が効果的に働くためには、標的筋(痙縮筋)を同定し、正確に注射することが重要である。ボツリヌス毒素製剤施注の精度、効果を高めるために、電気刺激や超音波によるガイドが有効である。電気刺激は、標的筋の収縮を確認することができる。超音波は標的筋をリアルタイムかつ視覚的に確認することができる。解剖学的に基づいた触診上の標的筋の同定と電気刺激および超音波ガイドでの同定の比較において、電気刺激、超音波ガイド下同定の方が施注精度は高く、またボツリヌス療法後の有意な改善効果が報告されている。ガイド下のボツリヌス療法は痙縮筋の同定、施注の精度、効果を担保する上で必要な手技となる。 超音波はリアルタイムかつ視覚的に標的筋までの深さ、形状、大きさを同定し、周囲の血管、神経との位置関係をみることで、施注の精度と安全性を高めてくれる。また、標的筋の動きを、他動および自動により確認することにより、より正確な施注につながる。超音波ガイド下治療を効率的に行なうための手順、穿刺法、ポジショニング、プローブ操作を概説し、上下肢の主要な標的筋の同定につき説明する。上肢のエコー操作(短軸走査)では背臥位姿勢でプローブ(リニア)を前腕から上腕、肩:末梢から中枢に移動しながら、長母指屈筋~浅・深指屈筋~撓側・尺側手根屈筋~円回内筋~上腕筋~上腕二頭筋~肩甲下筋~大胸筋と標的筋を同定し施注するとより効率に治療ができる。前腕中央部・橈側付近にプローブをあてると橈骨をメルクマールとして長母指屈筋、撓骨動脈と正中神経が同定できる。次に尺側へプローブを移動し正中神経と尺骨動脈・神経が描出できる場所をさがす。正中神経と尺骨動脈・神経を結ぶライン上の上半分が浅指屈筋、下半分が深指屈筋である。また、浅指屈筋、深指屈筋はそれぞれ4つの筋腹に分かれており、打ち分けが可能である。さらに中枢側へプローブを移動し、撓側・尺側手根屈筋、円回内筋、上腕筋、上腕二頭筋と同定していく。下肢のエコー操作では背臥位姿勢で逆に中枢側から末梢側へプローブを移動して長趾屈筋~後脛骨筋~腓腹筋内側頭~ヒラメ筋、側臥位姿勢で腓腹筋外側頭、長母趾屈筋と標的筋を同定・施注するとより効率に治療ができる。後脛骨筋は、脛骨をメルクマールとしてヒラメ筋、長趾屈筋の下方にあり同定が可能である。より下肢末梢部での施注は後脛骨筋への針の到達距離が短くなる。また、前脛骨筋下のアプローチも可能である。