[CSP4-3] ジストニアにおける鍼治療の併用
ジストニアは、持続的な筋緊張異常によって不随意運動や姿勢異常をきたす疾患である。我々はジストニア患者に対する頸部および上肢ジストニアに対する鍼治療と、その効果について紹介する。頸部ジストニアに対する鍼治療を紹介する。まず、臨床症状評価によって罹患筋の病態が本疾患特有の筋緊張異常(一次的障害)、もしくは長期間同じ頸部肢位を呈したことによる筋短縮あるいは皮膚短縮(二次的障害)である。一次的障害には、罹患筋が胸鎖乳突筋なら胸鎖乳突筋上を通る経絡である手陽明大腸経に所属している合谷、僧帽筋(上部線維)なら手少陽三焦経の外関、板状筋なら手太陽小腸経の後谿または外関と循経取穴に基づいて治療穴を決定する。また頸部ジストニアでは、頸部偏倚と同時に肩甲帯や体幹にも偏倚を呈し、肩甲挙筋や斜角筋、脊柱起立筋や腹筋群に筋緊張異常を認めることがある。背筋群および肩甲挙筋のように体幹背側面の筋群が罹患筋の場合には足太陽膀胱経の崑崙、腹筋群、大胸筋および斜角筋群のような体幹腹側面の筋群が罹患筋の場合には足陽明胃経の衝陽を用いる。頸部ジストニアでは頸部の不随意運動を認めることがある。このような頸部不随意運動には、頭頂部にある経穴である百会を用いる。鍼は経穴に垂直方向に刺入深度5mmで置鍼(鍼を刺したまま置く)し、目的とする筋緊張の変化を確認したのちに抜鍼する。二次的障害に対しては、筋・皮膚の短縮部位局所を集毛鍼で治療する。治療頻度は週1回を基本とする。上肢ジストニアに対しては、動作の円滑化を目的とした、頭髪際鍼の上肢区への置鍼を中心とする。二次的障害である手掌部の皮膚・筋短縮および知覚入力の改善には、集毛鍼を用いる。治療効果は、自覚的評価とともに書痙では書字評価テスト、筆圧、musician’s crampでは演奏の動作様式の変化で検討した。多くの症例で10回の鍼治療で書字・演奏の動作様式、自覚的評価がそれぞれ改善した。また、musician’s crampに対する鍼治療により上肢の動作の改善を認めただけでなく、演奏能力も向上した。ジストニアの治療としては、ボツリヌス治療が代表的であるが、今回の鍼治療を併用することで更なる治療効果を高めることは可能であると考える。