50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム4 ボツリヌス「+α」でもう一段上を目指す (日本ボツリヌス治療学会)

Thu. Nov 26, 2020 10:00 AM - 11:30 AM 第8会場 (2F K)

座長:正門 由久(東海大学医学部リハビリテーション科)、有村 公良(大勝病院)

[CSP4-4] ボツリヌス治療に抵抗性の局所性ジストニアに対する連続経頭蓋磁気刺激治療

村瀬永子 (国立病院機構 奈良医療センター)

【要旨】ボツリヌス治療に抵抗性の局所性ジストニアにたいして、連続経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)の治療が試みられる。有効性をしめした患者の慢性刺激効果は手術治療(電気凝固や深部脳刺激)に劣る。そのため慢性刺激の導入にあたっては限界を説明する必要がある。【はじめに】局所性ジストニアのボツリヌス注射は治療の第一選択とされるが、その有効性は痙性斜頸で中程度改善とされる(Castelao M et al., Cochrane Library 2017)。薬剤を用いても難治性の患者は約3-6割みられ、他の治療方針を選択する必要がある。そのひとつに非侵襲的脳刺激の方法があり、rTMSはそのひとつである(Erro R et al., EAN 2017)。rTMSにより抑制性の刺激をおこない、皮質に可塑的変化を誘導する。抑制としては運動前野への刺激を用いて治療を行っている。【方法】運動誘発電位が誘発される一次運動野より2cm前、1cm内側が運動前野(背側)を刺激した。安静時閾値の85%という弱い刺激で、0.2Hzのゆっくりした刺激を与えた。0.2Hzを選択したのは0.25Hz以上で悪化する場合がみられたからである。急性効果(250回刺激直後の効果)と慢性刺激(1か月に1-2回刺激して、1年以上15年の効果)を検討した。急性効果では刺激位置の検討と2重盲検による有効率を検討した。慢性効果は、急性効果がみられた患者を1か月に1-2回刺激して、1年以上の効果をみた。そのとき末梢からの感覚入力を弱めるリドカインの筋肉注射を併用した(Kaji R et al., Annals Neurol 1995)。【結果】急性効果:9人の書痙患者で1次運動野や補足運動野と比較し運動前野の刺激が有効であった(Murase N et al., Brain 2005)。2重盲検で、23名の書痙患者中14名(61%)が運動前野刺激で有効性を示した。慢性効果:rTMSに有効性を示した書痙患者18名と眼瞼痙攣1名、音楽家痙攣1名で慢性効果がみとめられた。書痙患者ではWriter’s cramp rating scale(part A 正常は0点、0-52点)が10.5(4.6SD)から4.2(3.6)と改善した。一方手術治療では9.9(5.5)から1.5(1.8)とほぼ症状は消失する効果が認められた(村瀬他 機能的脳神経外科 2018)。【考察】健常者が変化しないような弱い刺激のrTMSで急性効果がみられたのは、ジストニアの代償システムと考えられる。手術の治療効果が高いのは、ターゲットである基底核や視床腹側部がより病態の本質であるためと考えられる。【結論】rTMSは難治性局所ジストニアに試みるべき治療法であるが、寛解率は手術に比較して低く、導入に当たっては患者によく説明してICを得ておく必要がある。