50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム6 姿勢制御・運動協調とニューロモデュレーション (日本基礎理学療法学会)

Thu. Nov 26, 2020 2:40 PM - 4:10 PM 第8会場 (2F K)

座長:平岡 浩一(大阪府立大学 地域保健学域 総合リハビリテーション学類)、大西 秀明(新潟医療福祉大学)

[CSP6-2] 小脳刺激と運動調節

松木明好 (四條畷学園大学 リハビリテーション学部)

小脳は運動野(M1)や前庭神経核と解剖学的な連結を持ち、手指筋や姿勢制御筋、眼球の運動の調節に貢献している。本シンポジウムでは、小脳TMS等を用いて運動調節への小脳の関与について調べた我々の一連の研究を紹介する。(1)M1-TMSによって対側手指筋EMG上にMotor evoked potential(MEP)、及びその直後にSilent Period(SP)が観察される。このSPの長さは発揮される力の大きさに依存して変化する(Matsugi, SMR 2019)が、運動失調を呈するSCA症例ではこのSPが異常に延長する(Oechsner 1999, Matsugi et al. NR 2018)。また、示指外転20%MVC保持中に、M1-TMSと小脳TMSを負荷すると、ISI20-30msでMEPサイズに依存せずにSPが短縮することが示された(Matsugi et al. Brain Sci 2020)。以上より、力調節に関与する運動野内抑制性神経回路興奮性に小脳が関与している可能性が考えられる。(2)M1-TMSの5-8ms前の小脳TMSはMEPを抑制する(CBI)が、筋収縮中、及び筋収縮の運動イメージ中にはこの抑制が脱抑制となり、筋弛緩イメージではCBIは変わらない(Tanaka, Matsugi, Neurosci Res 2017)。このことは、CBIに関する経路を介した小脳から運動野への関与は課題依存的である可能性を示唆する。以上の知見(1,2)より、小脳は複数の経路を介して対側皮質脊髄路興奮性の調節に貢献していると考えられ、小脳疾患ではこれらの障害により運動の調節が障害される可能性がある。(3)小脳は前庭神経核と密接な関係を持ち、眼球運動制御に関与していると考えられる。前庭リハビリテーションで用いられるGaze Stability Ex.はDynamic gaze abilityを改善するが、その改善機序の一つに、頭部運動に対する眼球運動範囲の適応的変化がある。しかし、小脳への低頻度rTMSによって、この適応的変化が生じなくなる(Matsugi et al. Plos One 2019)。このことは、頭部運動に対する眼球運動の適応的変化のトレーナビィティに小脳が関与している可能性を示唆する。(4)SCA症例の主症状に末梢筋の緊張低下がある。我々は小脳と脊髄運動神経プールの機能的連結を評価するために、小脳TMS後のヒラメ筋H反射タイムコースを解析した。小脳TMS後約100ms後にH反射は有意に増大(Matsugi et al. NR 2014, 2015, SMR 2018)し、さらにこの促通は小脳tDCSによって極性依存的に変調する(Matsugi & Okada, Neurosi Res 2020)ことが明らかとなった。これらのことは、小脳は脊髄と機能的連結をもち、小脳の興奮性変化によってその影響を柔軟に変化させている可能性を示唆する。