日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム7 小児脳波・脳磁図研究の最前線 (日本小児神経学会)

2020年11月27日(金) 08:00 〜 09:30 第7会場 (2F J)

座長:夏目 淳(名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学寄附講座)、小林 勝弘(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 発達神経病態学)

[CSP7-3] 新生児脳波にまつわる最新の話題

城所博之 (名古屋大学 医学部 小児科)

新生児脳波に関する最新の話題として、前半では、主に新生児発作の発作型に関する国際抗てんかん連盟(ILAE)案とその問題点、発作同定アルゴリズムの現状を概説する。後半は、早産児脳波に特徴的なデルタブラッシュの発達的意義について概説し、私達が着手する脳波-機能的近赤外分光法(fNIRS)同時記録からの新知見にも触れる。
1.新生児発作の分類
ILAEが2018年に公表した新生児発作に対する新たな分類案は、ILAEが既に発表した「てんかんおよびてんかん発作の分類」に準じた内容となっている。新生児発作は、3つの発作型、運動発作、非運動発作、脳波上発作(electrographic seizures)に分類する。運動発作は、さらに自動症、間代発作、てんかん性スパズム、ミオクロニー発作、変遷性発作(sequential seizure)、強直発作に細分類される。ILAEの分類案の特徴の一つに、てんかん発作では、発作起始時の症状で発作型分類を行うが、新生児発作では発作中に観察される最も「優勢」な症状によって発作型を決定する点がある。また、別の特徴に、発作症状が継時的に変遷し、どの症状が優勢であるか判断できない場合に変遷性発作という用語を積極的に用いることが提案されている。変遷性発作にまつわる問題点も議論したい。
2. 新生児発作の同定
新生児発作の存在を疑った場合には、ビデオ脳波同時記録やamplitude-integrated EEGなどを用いて発作時の脳波を記録する。新生児発作の発作時変化は、起始と終止が明瞭であり、背景脳波とは明らかに異なる波形が、律動性・反復性・一定の形態を持って観察されるものである。また、発作中に脳波の波形が継時的に変化するevolution changeを認める。焦点発作の発作時変化は、少なくとも10秒以上持続するもの、と定義される。この「10秒ルール」は幾分恣意的であるが、経験的に容認できる。近年は、発作検出アルゴリズムを搭載した脳波計が臨床応用されており、その実用性を議論する。
3.早産児脳波のデルタブラッシュ
自発性脳活動は、神経発生、神経遊走、皮質形成や脳内ネットワーク形成といった早期の脳発達に重要である。電気生理的活動は脳発達の動力となり、神経系遺伝子発現の調整に寄与する。デルタブラッシュは早産児脳波にみられる特徴的所見であり、自発的電気的活動の1つである。早産児脳波は脳障害の評価や新生児発作の診断に有用である。しかし、近年の動物実験からのエビデンスは、新生児脳波に関する基本的考え方に修正を迫るものである。本シンポジウムでは、ヒトの脳発達におけるデルタブラッシュの重要性を再考する。