50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム8 精神・神経分野におけるtDCS研究-機序解明から臨床利用まで- (日本薬物脳波学会)

Fri. Nov 27, 2020 8:20 AM - 9:50 AM 第8会場 (2F K)

座長:尾内 康臣(浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター 生体機能イメージング研究室)、西田 圭一郎(関西医科大学精神神経学教室)

[CSP8-1] tDCSによるドパミンとGABA神経修飾

尾内康臣 (浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター 生体機能イメージング研究室)

Transcranial direct-current stimulation(tDCS)は非侵襲的な脳刺激法として脳科学およびリハビリテーション医学分野や精神神経疾患領域で用いられ、賦活効果が様々報告されている。これまでDCSの効果発現メカニズムに関しては膜電位変化で興奮作用としてグルタミン酸系と抑制性作用としてGABA系の関係から議論されてきた。tDCSの脳内分子動態への効果を調べた研究では2020年初頭時点でドパミン2報とμオピオイドが1報と非常に少ない。μオピオイド研究は古いものであるため解釈が難しいが、ドパミンに関しては賦活領域が類似して再現されている所見と考えられる。我々の最近の研究はその一つである。18名の健常成人男性に対してanodeを左前頭部、cathodeを右前頭部に設置し、2mA計26分間(13分間の刺激を20分間隔で2回実施)の実刺激とシャム刺激を行い、それぞれの刺激後に、画像計測と認知課題を施行した。対象者の割付方法には、無作為割付クロスオーバー二重盲検を用いた。[11C]Raclopride PETを用いて線条体におけるドパミン放出を評価した。その結果、tDCS実刺激を与えると右腹側線条体で内因性ドパミンの放出が上昇するのが分かった。tDCS下のパフォーマンスの向上が神経細胞の興奮性(グルタミン酸系)だけでなく、ドパミンという意欲・感情系の神経を賦活することで行動成績にプラスの効果を与えることが推察された。抑制性神経といわれるGABA系は常に活動しているはずであり、ドパミン神経が活動するなか、どのような制御を及ぼしているかをGABA-MRSを用いて検討した。MEGA-PRESS法を用いてデータ収集しLCモデル解析によりGABA/NAA比は左線条体で有意な上昇を、右線条体と左DLPFCでは低下傾向が示された。右腹側線条体でのドパミンが増加すると左DLPFCでのGABAが低下する相関関係も見られた。このことからtDCSは大脳皮質-基底核ループを介して、ドパミン-GABAシステムを調整して、相補的な作用により認知行動への意欲向上と興奮の側通に関係していることが示唆された。本シンポジウムではこのような知見を紹介する。