50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム8 精神・神経分野におけるtDCS研究-機序解明から臨床利用まで- (日本薬物脳波学会)

Fri. Nov 27, 2020 8:20 AM - 9:50 AM 第8会場 (2F K)

座長:尾内 康臣(浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター 生体機能イメージング研究室)、西田 圭一郎(関西医科大学精神神経学教室)

[CSP8-5] 統合失調症の社会認知機能障害に対する経頭蓋直流電気刺激(tDCS)の効果と展望

山田悠至1, 稲川拓磨2, 末吉一貴3, 和田歩3, 長谷川由美3, 白間綾3, 住吉太幹3 (1.国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 第二精神診療部, 2.国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 第一精神診療部, 3.国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部)

経頭蓋直流電気刺激(tDCS)とは、頭皮上に置いた電極から1-2mA程度の微弱な電流を流すことで脳の神経活動を修飾する、安価・簡便・低侵襲な電気刺激法である。主として左前頭部への陽性刺激でうつ病、統合失調症の陽性・陰性症状に対する改善効果が、複数報告されている。さらに、新たなtDCS刺激手法の効果の検証、反応予測法を明らかにするバイオマーカーの探索や、遠隔監視下での施行など臨床応用にむけた開発が、国内外で試みられている。国立精神・神経医療研究センター(当センター)病院でも、統合失調症の認知機能障害に対するtDCSの効果の検討が進められている。演者らのグループは、統合失調症の神経認知障害に対する左前頭部へのtDCSが、陽性症状、運動機能、言語記憶、言語流暢性などを改善することを確認した。また、認知機能と直結する日常生活技能の改善効果を、世界に先駆けて明らかにした。さらに、tDCSによる統合失調症の陽性症状の改善の程度が、近赤外線光トポグラフィーで予測しうることを示した。最近行った系統的レビューの結果からは、精神疾患の社会認知を対象とした研究におけるtDCSの効果は十分ではなく、さらなる検討の必要性が示された。そこで、統合失調症の社会認知機能障害に対するtDCSの効果を検証するパイロット研究(jRCTs032180026)を開始した。本研究では、tDCSのアノード(陽性刺激)を左上側頭溝に設定し、社会認知機能の下位領域を広くアウトカムに組み込むことで、探索的に社会認知機能の改善効果を測定することを目的としている。本講演では、当センターにおいて進行中の上記の介入研究を紹介し、統合失調症の社会認知機能障害の病態生理や予想されるtDCSの作用機序を概観するとともに、今後の課題・展望を国内外の動向を踏まえ考察する。