[CSP9-2] パーキンソン病における立位・歩行分析
パーキンソン病(PD)は静止時振戦、動作緩慢、筋固縮を3大徴候とし、進行すると姿勢反射障害が加わり、4大徴候とされる。脳神経内科医による一般診療の中では日常生活に支障を与える歩行障害が出現するのは動作緩慢の進行や姿勢反射障害が出現してからと考えられがちであるが、軽度の小刻み、すり足、腕振りの低下、すくみ足などの歩行障害が出現する以前の早期から特徴的な変化が出現することをわれわれは見出した。こうした立位・歩行の変化がバランス障害による転倒傾向など、ADLを大きく阻害する一因となる。われわれは、静止立位時および歩行時の足底圧の変化から、パーキンソン病に特徴的な足底圧の変化を見出した。足底圧測定機能付きのトレッドミル上で開閉眼での静止立位時と歩行時の足底圧を測定した。すると、正常群ではわずかに足部の後方にかかる圧が強かったが、静止立位時のPD群の足底圧は開閉眼時ともに正常群に比較して、後方荷重傾向が有意に強くなっていることが分かった。PDにおける特徴的な前傾姿勢を想像するとむしろ前方荷重になりそうな印象を受けるが、PD群では後方荷重にすることで、バランスをとっているのであろう。また、歩行時の足底圧の変化も同様に特徴的であり、全足底接地となっており、heel strikeがみられず、後方から前方への荷重移動がほとんどみられない。これは臨床でみられる像から考えても理解可能である。しかし、Yahr1-2の一見して軽症PDで正常歩行にみえている軽症群においても同様の結果がみられており、程度の差こそあれ、病初期からこの所見は変わらない。また、我々の施設では運動合併症を有するPD患者に対する脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)、特に視床下核(Subthalamic nucleus: STN)DBSを多数実施しているが、ここでも足底圧の特徴的な変化を捉えている。STN-DBS術後数日の立位評価を行うと、術前に比べて足底圧中心を示すCOP95%範囲円の面積が有意に大きく、立位動揺性を認めた。しかし、術後約1か月前後での退院時での結果ではその面積は小さくなり、立位動揺性は改善していた。以前よりSTN-DBSでは傍脊柱筋の筋緊張が低下するという報告があり、それが術後1ヶ月のリハビリテーションで筋緊張のコントロールが調整されるものと考えられる。